今年に入って首都圏でも一部のガソリンスタンドでレギュラーガソリンの価格がリッター90円台に突入するなど、急速に進む原油安。
世界で最も有力な原油価格の指標とされるニューヨーク原油先物(WTI)の価格も、わずか2年前には1バレル100ドルを超えていたが、今や30ドル前後と3分の1に暴落。「おかげでガソリンは安くなったし、国際線の燃油サーチャージもなくなってよかった」と、この原油安を喜んでいる人も多いだろう。
言うまでもなく、日本は石油や天然ガスの大半を輸入に頼る「エネルギー資源輸入国」。原油価格の大幅な下落は、単純に考えれば日本経済全体にとっても大きなプラスのはずだ。 ところが年明けから株式市場は急降下を始めている。日経平均は一時1万6千円台ギリギリまで下落。その要因として挙げられたのが「原油価格の急激な下落」と「中国経済の先行き不安」だった。
なぜ、資源輸入国の日本で原油価格の低下が株価下落の要因になるのか? そして原油安はなぜ起こり、それがこの先の日本と世界の経済にどのような影響を与えるのか?
こうした素朴な疑問に対し、石油・エネルギー関連の問題に詳しい経産省の現役官僚で、現在、世界平和研究所(中曽根康弘元首相が会長を務める政策研究機関)の主任研究員を務める藤(ふじ)和彦氏は、こう警鐘を鳴らす。
「今回の原油安は、金融資本主義が引き起こした一種のバブル崩壊です。このまま進めば、世界経済に深刻な危機を引き起こす可能性があります」
今や原油価格は『金融商品』
原油安で経済危機に!? その驚くべき理由について、藤氏は次のように語り始めた。
「原油価格が暴落したのは中国に代表される新興国経済の成長が鈍化して原油の需要が減ったことによる『過剰生産』が原因だと言う人がいます。
もちろん、私も過剰生産自体は否定しません。しかし、その量はあまりに小さい。現在、世界全体で生産されている原油は一日当たり約9700万バレル。そのうち『過剰生産分』だといわれているのは、たかだか200万バレル程度でしかないんです。
原油価格が今よりずっと高い時でも、実際には過剰生産分が100万バレルぐらいあるといわれていたので、それを差し引けば、新たな過剰分は約半分の100万バレル。 需要と供給のバランスが物の値段を決める『実体経済』の世界であれば、普通、この程度の過剰分で原油価格が突然3分の1になったりするはずがありません。
これが何を意味するかといえば、今や原油価格(原油先物取引価格)は株や債券と同じように、投機マネーの対象である『金融商品』になっているということ。そして、これまで投機マネーが膨らませ続けてきた大きな『原油バブル』が崩壊し、今まさに弾けているのです」(藤氏)
では、原油バブル崩壊とは、具体的にどういうことなのか? 投機マネーに乗っ取られ制御不能となった世界経済が、原油価格の大暴落で未曾有の危機に陥る恐れが…。
●この続きは発売中の『週刊プレイボーイ』8号「“ガソリン90円台!”で喜んでいたら裏でとんでもないことが進んでいた」でお読みいただけます。
(取材・文/川喜田 研)