宮崎謙介衆議院議員(35歳)の辞任が波紋を広げている。全国紙政治部記者が言う。
「辞任は本人の決断ではなく、官邸筋の強い圧力があったから。党がダメージを受ける前に、すっぱり宮崎議員を切り捨ててしまおうというのが官邸の意向でした。本人は復活を期したいと話していますが、あまりにイメージが悪すぎる。政界復帰の目はもうないでしょう」
普通ならこれで一件落着となるはずだが、自民党内では今もゴタゴタが続いている。政治部記者が続ける。
「宮崎の辞任で、京都3区では補選(4月24日投開票)が行なわれます。自民党京都府連は宮崎に代わる候補を立てて戦うつもりでいますが、谷垣幹事長が擁立に後ろ向きで、党内でモメているのです」
谷垣幹事長が後ろ向き? その胸中を政治評論家の浅川博忠氏がこう代弁する。
「4月の補選は北海道5区、京都3区のW選となります。北海道5区は急死した町村信孝前衆議院議長の弔(とむら)い合戦だから、自民が取りこぼすことはないでしょう。ただ、京都3区はわからない。『ゲス不倫』に対する地元有権者の怒りは大きい。しかも補選に出馬の意向を示している民主党の泉健太衆議院議員(比例近畿)は手ごわいので、自民候補は勝てない可能性が高い。
そうなると補選は1勝1敗となり、せっかく1月の宜野湾(ぎのわん)市長選で勝利した自民の勢いがストップしてしまう。7月の参院選にも悪影響が及びかねません。だったら1勝1敗でなく、擁立を見送って1勝1休としたほうが傷が小さくて済むと谷垣幹事長は判断しているのでしょう」
そんな逆風の自民党内では今、「数字の“2”は縁起が悪い、鬼門だ」と囁(ささや)かれているのだとか。一体、どういうこと? 前出の政治部記者が苦笑する。
「今回のゲス不倫をはじめ、ここ1、2年、下半身絡みのスキャンダルを起こしているのは当選2回生で、なぜか二階派所属の議員が多い。そのため、『2』という数字を忌み嫌うムードが党内に出ているのです」
なるほど。六本木で路チュー不倫した中川郁子(ゆうこ)、門(かど)博文、議員宿舎に未成年の男性を連れ込み、買春していたとされる武藤貴也、そして今回の「ゲス不倫」の宮崎謙介と、ここ1、2年、下半身スキャンダルを起こした国会議員はいずれも当選2回組だ。
二階派に「低劣な議員」がはびこる理由は?
「彼らは皆、12年に民主党が下野し、安倍自民が大勝した衆院選の当選組です。当時はまともに政権運営できない民主党に国民が呆れ、アンチ民主票が大量に自民党に流れた。つまり、候補はその資質に関係なく、出馬さえすれば勝てる楽チンな選挙だったのです。
14年の衆院選も同様です。当然、大した苦労もせずに2回も連続当選してしまうと、気は緩むもの。政治家として成長しないままだから、こんなスキャンダルを引き起こしてしまうのです」(前出・政治部記者)
当選2回生議員はまさに安倍自民の“地雷原”と化しているというわけだ。しかも前述の議員のうち、武藤貴也以外はすべて二階俊博総務会長率いる二階派。なぜ、こうも二階派議員のスキャンダルが続くのか? 前出の浅川氏が言う。
「二階さんはフトコロが深く、他派閥が加入をためらうようないわくつきの議員でも、どんどん受け入れてしまう。清濁(せいだく)併せ呑む政治家といえます。その包容力の大きさが裏目に出てしまった形です」
その包容力だけでなく、野心も災いしたと見る向きも。
「二階派は旧中曽根派の流れをくむ派閥で、伊吹文明(ぶんめい)衆議院議員が領袖(りょうしゅう)を務めていました。しかし、伊吹氏は12年に衆議院議長に就任するために離脱し(現在は二階派顧問)、その後釜として旧竹下派から合流した二階さんが領袖になったという経緯がある。
それだけに外様(とざま)の二階さんとしては直系議員を増やし、領袖としての影響力を強めたい。それが来る者拒まずの姿勢となり、スキャンダルを起こすような低劣な議員が大量に派閥入りするという結果につながったのでしょう」(前出・政治部記者)
こうした一連のスキャンダルもあり、自民党では公募制度を見直す動きも出ているという。
「世襲批判を避けるため、04年頃から自民党は候補を公募で決めるようになりました。しかし、書類審査や面接などで選考するため、どうしても学歴やルックスが重視されてしまう。そのため、はいつくばって地元で政治活動したこともないような薄っぺらな候補ばかりが選ばれてしまうようになったんです。今後は実績重視に加えて、“身体検査”も厳しくなっていくことと思います」(前出・浅川氏)
とはいえ、安倍チルドレンと呼ばれる自民の当選1、2回組はまだ120人前後もおり、劣化議員はまだまだたくさんいるはず。自民議員のスキャンダルはまだまだ続くかもしれない。
(取材・文/本誌ニュース班)