議員の人数だけでなく、歳費削減など大がかりな改革案を提言する古賀氏

「一票の格差」是正のため、協議されている衆議院選挙改革。

現在、定員削減が話し合われているが、その内容に『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、憤りを露(あらわ)にする。

***衆議院の定数削減の議論が混乱している。原因は地域間における一票の価値の「格差是正」問題と、消費増税の前に国会議員自らが覚悟を示す「身を切る改革」の議論がごちゃ混ぜになっていることにある。

格差是正のためには、有識者会議が出した「アダムズ方式」を採用し、小選挙区7増13減、比例区1増5減という案を採用すればよいのだが、自民党がこれを渋っている。マスコミは、その成否に焦点を当てているが、仮にこれによって「格差是正」が行なわれても「身を切る」という部分では全く不十分だということに気づいていないようだ。

衆参の国会議員は717人いる。今の案では、身を切るのは実質的にわずか10人で、大半の国会議員は痛くも痒くもない。本当に身を切る覚悟があるなら、すべての政治家が対象となるもっと大がかりな改革を断行すべきだ。

まずは国会議員の歳費(給与)をカットすべき。その額は年間約2100万円。これに“第2の給与”と呼ばれる文書通信費(非課税)がさらに1200万円加算される。合わせると3300万円だ。これだけ高待遇だと、その地位にしがみつくことが目的となる議員も現れてしまう。高すぎる給与は政治の劣化を招くのだ。

歳費は最終的には500万円から600万円くらいを目指すべきだと思う。これなら、一般的な国民と大差はない。その上で国会での質問や政策審議など議員活動にそれぞれ報酬を定め、歳費に上乗せすればよい。こうすれば、議員はよく働くようになるはずだ。

企業団体献金は即刻廃止にすべき!

文書通信費は廃止が望ましい。それが無理でも、領収書の提出を義務づけて実費精算制にするなどの改革は必要だ。

現状、文書通信費はその使途を明らかにする必要がない。だから、不心得な議員が年間1200万円の金を自宅のローンの返済に回したり、個人の遊興費に充(あ)てたりしても露見しないのだ。領収書の提出を義務づければ、そういったことはできなくなる。収支報告書や領収書をネットなどで公開すればさらによい。

秘書3人を公費で雇える現行システムも見直すべきだ。公設秘書の多くは議員の身の回りの世話をしたり、支持者から口利き依頼を引き受け、見返りに政治献金を集めるだけの役目に成り下がっている。

高度な専門知識が必要な政策秘書も、実は「政策担当秘書資格試験」にパスして採用された者は1割ほど。残りは「公設秘書として10年以上在籍すれば、政策秘書になれる」という要件を利用し、政策秘書になった者がほとんどだ。だから、政策をつくれない「名ばかり政策秘書」が永田町を跋扈(ばっこ)することになる。

政策秘書の年収は1千万円超、公設秘書も600万から800万円ということを考えれば、今の議員秘書のコストパフォーマンスは悪すぎる。給与を下げた上で、政策立案能力の確かな政策秘書を2名、事務所を回すための事務スタッフ1名の3名体制にすれば十分だ。

そして最後に、企業団体献金の禁止だ。年間総額320億円の政党助成金を受け取りながら、政治家がさらに企業から献金を受け取るのはおかしい。政治パーティでの献金集めを含めて、即刻廃止にすべきだ。

「定数10削減」ぐらいで、胸は張れない。今後、議員が果たすべき「身を切る改革」はいくらでもあるのだ。

古賀茂明(こが・しげあき)1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元幹部官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して2011年退官。著書『日本中枢の崩壊』(講談社)がベストセラーに。近著に『国家の暴走』(角川oneテーマ21)

(撮影/山形健司)