
4度目の核ミサイル実験を受け、国連が北朝鮮制裁決議を採択したのは3月上旬のこと。理事国は「前例のない厳しい制裁メニューになった」(米パワー国連大使)と胸を張るが、効果のほどはどうにも怪しい。
北朝鮮ウオッチャーがこう首をかしげる。
「北朝鮮と関係の深い中国、ロシアは今回も制裁の本気度はイマイチ。そのせいで結局、北朝鮮への原油供給や海外で働く北朝鮮労働者の母国送金停止などが制裁メニューから除外されてしまった。何よりも水爆実験を命令した金正恩(キム・ジョンウン)第一書記の名前が制裁対象人物リストにアップされていない。これでは北朝鮮に核開発を断念させることはできません」
そんな中、意外にも北朝鮮にダメージを与えている制裁メニューが…。それは韓国が国民に呼びかけた北朝鮮レストランの利用自粛要請だ。
北朝鮮は自国文化PRの名目で、中国や東南アジアにレストランを出店している。その数、約170店。中国・瀋陽(しんよう)市の北朝鮮レストランに行ったことがあるという日本人商社マンがこう証言する。
「客単価は4千円から5千円ほどで、料理もありふれたコリアンフードですが、服務員と呼ばれる女性ウエートレスが美人ぞろいなんです。それも今風ではなく、昭和の匂いがプンプンするレトロ美人。見つめると、恥ずかしげにうつむいてしまう様子が新鮮で、一度でファンになってしまいました」
そう、北朝鮮レストランの売りは、「喜び組」を彷彿(ほうふつ)とさせる美人ウエートレスたちなのだ。しかも料理を運んでくれるだけじゃない。
「一日2回、彼女らが様々な衣装に着替え、小さなステージで歌や踊りを披露してくれるんです。一番萌えたのは、膝上5cmほどのミニスカート姿で登場した時。なぜか全員、生脚で妙になまめかしくて萌えました。後で女性のひとりに『どうしてパンストはかないの?』と聞いたんですが、『パンストは高くて買えない』と恥じらう仕草がまたかわいくて。彼女らを見たさに何度も足を運んでしまいました」(商社マン)
金正恩政権の貴重な外貨獲得源に?
ところが、この魅惑の北朝鮮レストランが金正恩政権の貴重な外貨獲得源になっているという。『デイリーNK』東京支局長の髙英起(コウ・ヨンギ)氏が言う。
「レストランは事実上の国営で、美貌のウエートレスは全員、本国から選抜されて派遣されます。ただ、女性らには国が定めた給与が北朝鮮通貨で支払われるだけ。年間4千万ドルから1億ドルと推定される利益のほとんどは、金正恩第一書記の統治資金を管理する労働党39号室などに送金されます。
韓国政府が北朝鮮レストランの利用自粛を呼びかけたのは、最も多い利用客が韓国人観光客で、しかも平壌(ピョンヤン)に送金された外貨が核やミサイルの開発に流用されていると判断したからなんです」
さて、その効果のほどは?
「2月下旬、中国の丹東(たんとう)市にある北朝鮮レストランを訪れた知人によると、いつもはフロアの大半を占めている韓国人の姿が見えず、客席は半分も埋まっていなかったそうです」(前出・商社マン)
どうやら国連の中途半端な制裁よりもはるかに効果がありそう。金正恩第一書記の泣きっ面が目に見えるようだ。
(取材・文/本誌ニュース班)