中身も変わらず、ただ合体しただけの民進党に古賀氏は苦言を呈す 中身も変わらず、ただ合体しただけの民進党に古賀氏は苦言を呈す

野党合流で期待が寄せられた民進党。しかし、いざ組織されると、その期待をよそに支持率は低かった…。

『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、民進党が躍進するためにふたつのアドバイスを送る。

*** 民主党と維新の党が合流し、民進党がスタートした。新党の勢力は衆参合わせて156人。自民党に対抗し得る大型野党の誕生といってよい。

だが、新党への期待は低い。ANNの世論調査(3月26.27日実施)によると、民進党の支持率は15.6%。先月の同調査では民主党14.6%、維新の党1.3%だった。つまり、新党の支持率は民主、維新を足した数字を下回ってしまったことになる。なぜ、民進党への支持がこれだけ低いのだろうか?

新党がブームになるには旧来政党の政策と人事が変わり、その中身が刷新されなくてはならない。だが、民進党は民主と維新が足し算されただけ。党の顔も打ち出した政策もほとんど以前と同じで、新味が感じられない。有権者は新党が生まれたといわれても、党名を変えて看板をかけ替えただけの「野合」にすぎないと看破している。

ただ、注目すべき数字も出ている。「新党に期待する」が29%と支持率よりもかなり高いことだ。29%の“期待する”層と15.6%の明確な民進党支持層の差は13.4%で、この多くは安倍・自民一強政治に代わる新風を期待する無党派層だろう。

無党派層は全有権者の4割前後を占める。この層の期待感があるうちに大向こうをうならせる大胆な政策、人事を打ち出すことができれば、自公政権と戦えるはずだ。

そこで民進党にエールを込めてふたつ提言したい。

キーマンはあの女性議員!?

一点目は人事である。新党の人事で目を引くのは、政調会長に待機児童問題などで今売り出し中の山尾志桜里(しおり)衆院議員を充(あ)てたことだ。本当は政調会長などでなく、代表に抜擢(ばってき)するくらいのサプライズがあってもよかったと思うが、とにかく民進党はこうしたフレッシュで有為な人材をどんどん登用することだ。

二点目はこうして抜擢された政治家の「暴走」を期待したい。今の民進党は寄せ集め感が強く、安全保障、エネルギー、行政改革などの重要政策も統一感がない。そこで新党で抜擢された政治家には党内で「暴走」と批判されるくらいの政策論争を起こしてほしい。

例えば、山尾議員は過去の選挙で原発ゼロ政策を主張するため、原発推進の中部電力労組の支援をあえて断っている。ならば、山尾議員は新党の政調会長として「原発ゼロ」を打ち出してみてはどうか? 党内で批判が強ければ政調会長の辞任を宣言し、今年9月の党代表選に「原発ゼロ」を掲げて出馬の構えを見せるのだ。

今、山尾議員に辞任されたら民進党は終わりだ。山尾議員の声が選挙公約に入る可能性は十分にある。

お行儀よく政調会長に納まって、単なる人寄せパンダになるのか、それとも安倍政権と対決できる政策を打ち出すため、党内が割れるほどの政策論争に打って出るのか。おとなしくしていれば、民進党への期待は急速にしぼむだろう。しかし、「暴走」があれば、新党への淡い「期待」は強い「支持」に変わり、無党派層が投票所へと足を運ぶことにつながるはずだ。

時は桜満開の春。「志桜里」の宴(うたげ)を始めるのにふさわしい。声を大にして言おう。山尾志桜里よ、「暴走」せよ!

古賀茂明(こが・しげあき) 1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元幹部官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して2011年退官。著書『日本中枢の崩壊』(講談社)がベストセラーに。近著に『国家の暴走』(角川oneテーマ21)

(撮影/山形健司)