米大統領予備選でドナルド・トランプが躍進する中、日本では橋下徹氏から「目が離せない」と語る佐藤優氏(右)と鈴木宗男氏 米大統領予備選でドナルド・トランプが躍進する中、日本では橋下徹氏から「目が離せない」と語る佐藤優氏(右)と鈴木宗男氏

鈴木宗男・新党大地代表と、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏による対談講演会「東京大地塾」

前編記事(『「日本死ね」は社会大混乱の前兆。今の政治は匿名の発言に過剰反応している』)では「民進党」の混迷ぶりから「日本死ね」で話題になった保育所問題から見える日本の危機を語った佐藤氏が、後編では米大統領予備選のドナルド・トランプ大躍進、そして橋下徹氏が首相になる可能性に言及する――。

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佐藤 こんな感じで日本は大変な状況なんだけれども、実はアメリカはもっと追い詰められてるんです。年間300万円の学費払って中堅どころの大学にローンで通って、1200万円の借金を背負って卒業したけれども就職口がない。

一方、年間800万円払えるヤツは、ハーバード大学に6年間通って修士で卒業して、投資銀行に就職。初年度の年収が5千万円で、5年後にはそれが2億円になる。そういうヤツが犬を飼っていて、1200万円の借金抱えた大卒が、そういう犬を5頭くらい連れて朝の散歩のバイトで食いつないでいる。こういう例がニューヨークにはたくさんあるんです。

こんな人たちが「もうなんでもいいからちゃぶ台返しだー!!」という気持ちになって、今、ふたつのちゃぶ台の返し方が支持されている。

ひとつは、民主党大統領予備選で頑張っているサンダース候補。ちょっと年食った(74歳)社会主義者で、税収はみんなに再分配だ!って言ってるから、こっちのジイチャンに賭けようという流れ。で、もうひとつが共和党の「メキシコ人が入ってこないように国境に壁を造れ。その費用はメキシコ人に払わせよう」と言ってるトランプさん(笑)。この人も今の構造を壊してくれそうだと。

ちなみに、ロシアのプーチンは「基本的にオレについてこい。ついてくるヤツは安心しろ、歯向かうヤツは皆殺しだ」と(笑)。こういう政治家についていきますって人たちが今、世界中で増えている。世の中の雰囲気がかなり変わってきてると思います。

特にトランプ大統領の誕生は、冗談ではない。可能性あります。すると世界構造は変わる。日本は米軍の駐留なき日米安保になる可能性があります。

こういう状況の中で日本では、大阪維新の会の橋下徹さんが、キャスターという一歩下がったところで、無責任な立場からなんでも言えるようになった。それで世間をかき混ぜて雰囲気つくって、頼まれて政治家に復活という体を取る。一歩下がって、二歩前進で国政に出てくるわけです。そういえば、トランプさんも昔、キャスターやってましたね(笑)。

とにかく、橋下さんは頭がいいから、ポピュリズムで押していくことを決めている。彼ぐらいマスメディアを使って大衆を引きつける力があれば、金のかからない選挙ができますからね。彼の動きは要注意です。

ただし、橋下さんには本当にやりたい政策はないと思う。彼は目の前に出てきた課題を処理していく状況対応型だから、今後どんどん変貌していくでしょう。そういう意味でも目が離せない。

ということで、アメリカはトランプ、日本は橋下で大きく変わっていくと思います(笑)。

鈴木 いや、これはまた恐ろしい話ですね(苦笑)。

●鈴木宗男(すずき・むねお) 1948年生まれ、北海道出身。新党大地代表。2002年に国策捜査で逮捕・起訴、2010年に収監される。現在は2017年4月公民権停止満了後の立候補、議員復活に向け、全国行脚中!

●佐藤優(さとう・まさる) 1960年生まれ、東京都出身。外務省時代に鈴木宗男氏と知り合い、鈴木氏同様、国策捜査で逮捕・起訴される。外務省退職後は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞するなど、作家・評論家として活躍

●「東京大地塾」とは? 毎月1回、衆議院第二議員会館の会議室を使って行なわれる新党大地主催の国政・国際情勢などの分析・講演会。鈴木・佐藤両氏の鋭い解説が無料で聴けるとあって、毎回100人ほどの人が集まる大盛況ぶりを見せる。次回の開催は4月28日(木)。詳しくは新党大地のホームページへ

(取材・文/小峯隆生 撮影/五十嵐和博)