豪政府がフランスへの発注を発表した4月26日、シドニーのクッタバル海軍基地を出航し、日本へ向けて潜航に入る直前の海自潜水艦「はくりゅう」

意気揚々とオーストラリアに乗り込み、日本初の大型武器輸出に向けて“最後のアピール”を行なったはずの海自の潜水艦は、一転してまさかの「屈辱」にまみれたーー。一体、何が起きたのか?

4月15日、オーストラリア南東部のシドニー湾に、海上自衛隊のそうりゅう型潜水艦三番艦「はくりゅう」が到着した。表向きの理由は豪海軍との合同訓練への参加だが、間近に迫った豪次期潜水艦コンペの結果発表に向けた“最後のアピール”を兼ねていることは明らかだった。

このコンペは豪政府からの受注を日本、フランス、ドイツの3ヵ国が争っており、報道ではたびたび日本の優位が伝えられていた。豪海軍の事情に詳しい現地の軍事ジャーナリストもこう語る。

「現在、豪海軍が使用している『コリンズ』級潜水艦はヨーロッパ企業の設計ですが、多くの技術的問題が発生した。そのため、今回は大型ディーゼル艦の技術に定評のある日本製潜水艦を導入するのが自然だろう、という雰囲気は確かにありました」

しかし、シドニー湾のクッタバル海軍基地に入港した「はくりゅう」は、そこで“奇妙な待遇”を受けた。同行した2隻の海自護衛艦は、観光客も見物できるメインの埠頭に停泊したのに「はくりゅう」だけは人目につかない湾奥の埠頭へ係留されたのだ。

「はくりゅう」を空撮するために現地を訪れていたフォトジャーナリストの柿谷哲也氏はこう語る。

「外国の海軍艦隊が来訪した場合、週末には必ず一般公開イベントが行なわれるのが通例です。しかし、今回の日程中には3連休もあったのに海自艦の一般公開はなし。また、海自は潜水艦も含めた報道公開を企画していましたが、これも豪側にキャンセルされたようです」

そこで、柿谷氏は湾奥に停泊する「はくりゅう」を撮影しようと水上タクシーに乗り込んだものの、操縦士はなぜか近づこうとしなかった。

「操縦士いわく、『約2週間前、あの埠頭には来るなと豪海軍からお達しが出た』というのです。普段なら問題なく自由に出入りできる場所なのですが…」(柿谷氏)

なぜ日本の潜水艦は選ばれなかったのか?

そして、合同訓練を終えた「はくりゅう」がシドニー湾から出航した4月26日、豪ターンブル首相は記者会見を開き、フランスから潜水艦を購入すると発表したのだ。

「おそらく水上タクシーにお達しが出た時点(4月10日~15日あたり)で結論は決まっていたのでしょう。豪側としては、フランスへの発注を発表する直前に『はくりゅう』の関連報道が盛り上がるのを避けたかったのだと思います。それにしても、海自艦隊の出航日にわざわざ発表をぶつけるというのは、マナーとしてはどうかと思いましたが…」(柿谷氏)

では、なぜ日本の潜水艦は選ばれなかったのか? 今回の「シドニーの屈辱」の背後には中国の存在がチラついているという。

実は日本ではあまり知られていないが、近年、中豪両国は急接近。日本の潜水艦がオーストラリアに売れていた場合、日本の潜水艦技術が中国へと筒抜けになった可能性すら指摘されている。

今回の件を通じて見えてきた、日本の武器輸出に潜む「中国のリスク」とはなんだったのか? そして本格的な武器輸出に舵を切った安倍政権が出鼻をくじかれたにもかかわらず、むしろ失注してよかったとの声もある根拠は…。

月曜発売の『週刊プレイボーイ』21号ではシドニー現地レポートとともに詳しく伝えているので、ぜひご覧いただきたい。

(取材・構成/小峯隆生 撮影/柿谷哲也)

■週刊プレイボーイ21号「まさかの受注失敗!日本潜水艦『シドニーの屈辱』はこうして起きた」より