安部内閣の閣僚の多くが、その関連組織(日本会議議連)に所属し、政策にも大きな影響を与えているとされる、保守系市民団体「日本会議」。この組織の実体に迫った一冊の本が今、大きな注目を集めている。
それが菅野完(たもつ)氏の著書、『日本会議の研究』(扶桑社新書)だ。
発売前から重版が決定し、発売直後から品切れが続出。中古本市場では一時、定価の十数倍もの値段がつく一方で、出版元には「日本会議事務総長・椛島有三」の名義で、直(ただ)ちに出版の差し止めを求める申し入れ書が届くなど、当の日本会議もカンカンのご様子。まさに話題騒然だ。
渦中の菅野氏がこう語る。
「こうして、この本(『日本会議の研究』)に大きな反響をいただくことは大変ありがたいことですが、実を言うと少し怖い気持ちもあります」
と、菅野氏は現在の心境をこう話し始めた。何か身の危険を感じているのか?
「いえそうではなくて、私がこの本の基になった扶桑社の情報サイト『ハーバー・ビジネス・オンライン』での連載『草の根保守の蠢動(しゅんどう)』を書き始めた当初は、『単なる陰謀論にすぎない』という見方をする人が多かったにもかかわらず、こんなに売れてる。
ですから、どういう人がどういう目的で、この本を読んでくださっているのかが、まだわからない。それが怖いというのが正直なところです」
なぜ大手マスコミはこの問題に触れようとしない?
それとは逆に胸をなで下ろす出来事もあったという。
「昨年2月から連載を始めて、週プレも含めていくつかの雑誌で日本会議に関する記事が組まれ、私と同じ問題意識を持つ人が増えていることは感じていました。
しかし、その一方で新聞やTVはこの問題について沈黙を続けていた。私が参考にした資料や取材で得た情報の多くは、大手新聞の政治部記者なら知らないはずがないのに、なぜ彼らはこの問題に触れようとしないのか?
たったひとりで走り続けるマラソンのように『もしかしたら自分は大きな勘違いをしているのでは?』という不安と、この1年ずっと闘い続けてきたのです。その意味では、今年3月に朝日新聞が日本会議の特集記事を掲載して、『ああ、俺は間違ってなかったんだ』とホッとしました。日本会議からの『出版差し止め申し入れ』も、ある意味そうでしたが」
1年近く前、本誌が菅野氏への取材を基に特集記事を掲載した当時は、まだ名前すら一般的に知られていなかった「日本会議」の存在。それがなぜ今、これほど注目を集めているのか?
そして安倍内閣が推進する憲法改正への動きを支える、この団体は一体どこから生まれたのか? その主要メンバーが学生運動時代から影響を受ける新興宗教団体とは…。
月曜発売の『週刊プレイボーイ』22号では、菅野氏へのインタビューを通じて、日本会議の正体と影響力の実態に迫っているので、是非ご覧いただきたい。
(取材・文/川喜田 研 撮影/村上宗一郎)