佐藤優氏(右)、鈴木宗男氏が注目するサミットのヤマ場、そして安倍外交のポイントとは?

鈴木宗男・新党大地代表と、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏による対談講演会「東京大地塾」

前編記事(「三菱グループの不気味なトラブルが暗示する“壊れかけたニッポン”」)では、オーストラリアの次世代潜水艦の受注失敗や三菱自動車の燃費偽装問題発覚から見える日本の危機を両者が語った。後編では伊勢志摩サミットにおけるテロの可能性に言及する。

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―5月26日から開催される伊勢志摩サミットですが、最大の注目点はどこでしょうか?

佐藤 まず、日本の経済政策に対して各国がなんと言うかですね。アベノミクスはうまくいっているのか、消費増税をやると経済が減速するから増税はやらないでくれ、と言うのかどうか。そうなった場合、安倍さんは、熊本地震は東北ほどの大震災ではないし、リーマン・ショック級の経済ダメージがあったわけではないけど、国際協調のために消費増税の実施を延期しないといけなくなる。サミットのヤマ場は、そういう状況になるかどうかだと思います。

それからもうひとつ、悪い意味で注目しないといけないのが、サミット期間中に日本のどこかでテロが起きるかどうか? 起きるとしたら、警備が厳重な伊勢志摩や東京ではなく、その分、手薄になっている地方都市でしょう。その時に日本の世論がどう反応するか? 残念ながら、テロは大きな問題となってくるでしょう。

鈴木 そうですね。私も伊勢志摩サミットは経済が一番の課題になると思っています。サミット前に安倍総理はイタリア、フランス、ドイツ、イギリスなどを歴訪して、各国の意向の最大公約数を絞っていき、最後にロシアでプーチン大統領と会います。そこでプーチンさんとどういう話ができるか注目ですね。

佐藤 日ロ首脳会談という意味でも、次期事務次官候補の杉山晋輔審議官の働きには期待できますね。実は今回、オバマ大統領の広島訪問の流れをつくったのは杉山さんですから。原爆を落とした国の現職大統領を広島に連れてくるのは大変な話です。

これは核廃絶の演説を行なってノーベル平和賞をもらったのに、その後何もできなかったどころか、イランとの関係で核拡散に貢献するようなことをしてしまったオバマさんの心の傷を、杉山さんがうまくとらえたから実現した。

杉山さんは、何度も言いますが、自分の出世しか考えていないので、仕事の熱心さは信用できる(笑)。だからオバマ大統領の広島訪問と同じように、北方領土も自分のさらなる出世のためと頑張ってくれたらいい。動機は悪くても、結果、領土が返ってくればいいんですから(笑)。

●鈴木宗男(すずき・むねお)1948年生まれ、北海道出身。新党大地代表。2002年に国策捜査で逮捕・起訴、2010年に収監される。現在は2017年4月公民権停止満了後の立候補、議員復活に向け、全国行脚中!

●佐藤 優(さとう・まさる)1960年生まれ、東京都出身。外務省時代に鈴木宗男氏と知り合い、鈴木氏同様、国策捜査で逮捕・起訴される。外務省退職後は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞するなど、作家・評論家として活躍

●「東京大地塾」とは?毎月1回、衆議院第二議員会館の会議室を使って行なわれる新党大地主催の国政・国際情勢などの分析・講演会。鈴木・佐藤両氏の鋭い解説が無料で聞けるとあって、毎回100人ほどの人が集まる大盛況ぶりを見せる。次回の開催は5月26日(木)。詳しくは新党大地のホームページへ

(取材・文/小峯隆生 撮影/五十嵐和博)