都庁を揺るがす“舛添問題”。知事の進退に注目が集まる中、その足元では新たな問題が浮上していた!

舛添要一東京都知事の政治資金問題をめぐり、都議会が紛糾している。

「知事は疑惑の総合商店」「身を切る覚悟が必要だ」――与野党議員から容赦ない追及を受け続けている舛添知事だが、実は今、その足元でものっぴきならない問題が浮上している。

今年度の舛添知事の外遊予算、約3億3千万円がその火種だ。都民から『豪華すぎる』と批判された昨年度予算(約2億4千万円)の9千万円増しとなる額である。

都庁・政策企画局の職員A氏がこう話す。

「今年度で計5回の海外出張を想定して昨年に予算編成したもので、リオ五輪とパラリンピックの閉会式(8月21日と9月18日)で開催される五輪旗の引継ぎ式に出席するための“リオ出張2回分”も含まれています」

辞任か続投か、どちらに転ぶか予断を許さない情勢ではあるが、舛添氏は「引き継ぎ式には出席する」との意向を示している。だが、そのための外遊予算は一連の舛添問題が発覚する前に計上されていたため、やはりバカ高い費用が積み上げられていたわけだ。前出の都庁職員A氏も「リオ出張も航空運賃はファーストクラスで見積もっていた」と打ち明ける。

「知事、やめろ」コールが噴出する中、この外遊予算をそのままにしておくわけにもいかない。そこで4月末、舛添氏は都庁内に「海外出張経費検討委員会」を設置。「知事から『海外出張の費用を抜本的に見直せ』と指示があり、まさに今、主に出張経費の削減について幅広く検討している」(A氏)のだという。その結果は6月末までに発表するとのこと。

では、出張経費の削減とは一体どういうものなのか? A氏がこう続ける。

「いくらに減らすといった目標値は定めておりませんが、知事が申した通り、『ファーストクラスはビジネスクラス』に『スイートルームは使用しない』、『随行人数は必要最低限に』といった方向で、ひとつひとつ経費の見直しを進めています」

だが、この見直しの進め方について、東京都議会に出席している都議の音喜多駿(おときた・しゅん)氏はこんな疑問を呈する。

「検討委員会というなら、当然、“第三者”を入れるべきはずなのに、そのメンバーは舛添知事の指示で集まった都庁職員だけで構成されています。知事の身内で固めたチームが厳正な目を持てるはずがないでしょう。要はこれも舛添知事の時間稼ぎ。4月末から検討を始め、結果は6月中に発表すると言っていますが、知事は“2ヵ月もすれば騒動は鎮火するはず”と考えたのでしょう」

外遊予算の使い残しが新たな火種に?

6月に入った今、批判ムードが収まるどころか日増しに高まっているところを見ると、その目論見は甘かったといわざるをえない…。

さらに、この外遊予算を仮に縮小したとして、舛添氏が自らの首を絞めかねない問題も指摘されている。ひとつ目が予算の使い残しだ。別の都職員B氏がこうこぼす。

「予算は単年度で使い切るのがキホンですから今回、外遊予算を削れば、予算がだぶついてしまいます。それをどう消化すべきか…。都の財務局は今、頭を悩ませています」

予算計上時にはこんなスキャンダルになるとはつゆ知らず…

「財務局だけでなく、知事も今年度の外遊予算の編成には後悔していると思います。今後、都議会での追及を乗り切って知事の座に居座ることができたとしても、海外出張費についてあれこれ詮議されたら、寝た子を起こすことにもなりかねない。予算の見直しは、できるだけ静かにやりたいと知事は考えているはずです」(前出B氏)

その結果、ダブついた外遊予算はどう処理するつもりなのか? 音喜多都議はこう見る。

「舛添知事は子育て基金や防災基金など、“都民ウケ”の良さそうな基金を立ち上げて『都政のために役立てました!』とアピールしてくるでしょう。自分の非を隠すそのパフォーマンスに騙(だま)されてはいけません」

有意義な使い道となるならば不幸中の幸いだが、今後、公表されるであろう外遊予算の削減結果次第では、都民感情を逆なでする新たな火種ともなりかねないというわけだ。そしてもうひとつ、問題はこんなところにも…。

検討委員会は今、8月と9月に予定されているリオ出張時の宿泊先について「スイートルームは使わず、宿泊料は条例で定められている上限額を目安に見直しを進めている」のだが、その条例上限額は「1泊(1名分)・2万4200円」(A氏)なのだという。

リオ五輪が2ヵ月後に迫る中、その値段でセキュリティにも考慮した宿泊先は確保できるのか?

リオ市内では深刻な“ホテル不足”で…

「現地の宿泊先の混雑状況はまだ把握しておりませんが、値段(宿泊料)を下げれば選択肢も広がりますから、なんとか確保できるんじゃないかと思います」(A氏)というが、この見込みも甘くはないのだろうか…。

中南米旅行を専門に取り扱う都内の旅行会社の担当者がこう話す。

「ブラジル国内の政治の混乱と経済の低迷で五輪の準備が間に合わなかったのでしょう。今、リオ市内では深刻な“ホテル不足”の状況に陥っています。一昨年に開催されたブラジルW杯とは異なり、一都市開催なので問題はより深刻です。

リオ市内の宿泊料は通常、1万5千円から2万円台が相場ですが、今はその5倍から10倍の料金に跳ね上がっています。加えて、現地のホテル側も『開会式から閉会式までの長期利用しか予約は受け付けない』などと強気の姿勢を見せており、2~3泊の短期利用は予約が非常に取りづらくなっているのが現状です。

1泊2万4200円が上限? その額では難しいでしょう。五輪のメイン会場から車で1時間近く離れた場所ならなんとか確保できるかもしれませんが、盗難や暴行事件が多発する治安の悪いエリアとなってしまいます」

4月の定例会見では『トップが二流のビジネスホテルに泊まりますか?』、『恥ずかしいでしょう』などと発言していた舛添知事。リオ出張には文字通り、“身を切る覚悟”が必要となるかもしれない…。

(取材・文/週プレNEWS編集部)