従来の常識にとらわれず、選挙を大いに楽しんでいいと語る大川総裁

初の「18歳選挙」となる7月10日の参議院議員選挙ーー。

『週刊プレイボーイ』26号で「18、19歳の63.5%が投票に行く」(本誌調べ)というアンケート結果を紹介したが、政治への接し方がまだよくわからないという新有権者も多いはず。そこで、各界で活躍する“先輩”から「選挙のたしなみ方」を伝授してもらおう!

というわけで、“世界初の芸人ジャーナリスト”を自称し、アメリカ、台湾などの大統領、総統選挙にも自分の足で出向く大川興業の大川豊総裁に話を伺った。

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ついに18歳が世の中と遊べる時代がやって来た。これまで未成年は選挙運動ができなかったが、これからは自分たちで選挙が楽しめる。従来の常識にとらわれず、大いに楽しんでくれ。

今まで俺はインディーズ候補、いわゆる泡沫(ほうまつ)候補を追いかけてきた。しかし、これからは有権者側にもおもしろい活動家が現れるはずだ。18歳、19歳から選挙界の新たなヒーロー、新たなオタクが生まれることを期待している。

まず、みんなが悩むのは「候補者をどうやって選んだらいいのか」ということだろう。俺の経験から言えば、基本的に議員会館の部屋に資料が散乱している“汚部屋”の国会議員は政策をちゃんと自分でやっている。逆に、部屋がキレイな議員は自分で政策をやらずに官僚丸投げになっている傾向が強い。

議員会館には議員の部屋と会議室をつなぐ扉があるが、ある議員の部屋は山積みの資料が扉をふさいでいた。あまりの汚部屋ぶりに写真を撮ったほどだ。それなのに俺が「TPPの資料は?」「安保法制の資料は?」と聞くと、すぐに山の中から引っ張り出せる。すごいと思わないか。

もちろん、普通の人がいきなり議員会館に行くのはハードルが高いだろう。だから最初は俺が汚部屋の国会議員を見つけて公開したい。きっとそのうちブラタモリみたいに議員会館の部屋を訪ねて、みんなに現状を知らせる若い政治オタクも生まれるはずだ。

もちろん、自分が各候補者の政策を見て判断するのが一番いい。でも、実際にはわかりづらい。そんなときはAKB48の総選挙を思い出してほしい。アイドルオタクがいろんな情報を集めてみんなに教えてくれるだろ。アイドルの実家を訪ねるのが好きな人、家族構成を調べるのが好きな人、オタ芸をするのが好きな人、握手会に行くのが好きな人、いろんな人がいる。

基本は政治家も同じだ。しかも参院選はCDを買う必要がないから参加しやすい。ぜひ、自分が新しいタイプの政治オタクとなって世界に発信してほしい。それは有権者の投票行動の参考になる。

政治家との握手会に出かけよう

もし、政治家の人となりを知りたかったら、直接、選挙事務所を訪ねるといい。政治家本人が不在でも、事務所を訪ねるだけでキャラはわかる。

俺は以前、「国民の声を聞く」とカッコいいことを言っていた候補の選挙事務所を訪ねたことがある。そうしたらいきなり怖い人が出てきて「何しに来た」と怒られた。その人は落選した。アイドルの握手会と同じ感覚で、政治家との握手会に出かけよう

選挙が近づくと、いろんなところで街頭演説会が開かれる。そこが握手会の会場だ。俺もよく出かける。動員をかけられた人たちに負けないように、早い時間から最前列に並んで候補者を待つ。オレはそうやって安倍総理や石破(いしば)大臣、元カリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルツェネッガーと握手してきた。握手の力具合で、絶好調でノッているのか、苦しい選挙をやっているのかがわかる。

直接行けない場合は、ネット中継でもいい。そのときは演説より演説終了後に注目してほしい。そこに人間性が出る。有権者が待っているのに、握手せずにさっさと消える政治家もいる。AKBの握手会で神対応と塩対応があるように、政治家の握手にもいろんな対応がある。SNSで質問して反応を探るのもいい。

街頭演説会場に行って熱心に演説に聞き入っていると、翌日の新聞も楽しみになる。街頭演説を聞きに行った翌日には、地方紙、全国紙、スポーツ紙などに俺の写真が載ることがある。写真には「熱心に聞き入る有権者」という説明がついている。大川総裁とは書いていない。

選挙期間中は特定の政治家の写真を載せにくいので、マスコミのカメラは必ず有権者側を向いて写真を撮るのだ。もしここにドナルド・トランプのお面を被ったやつがいたら絶対撮るだろ。ぜひ、いろんな街頭演説会場に現れてくれ。今はネットで「ここにもトランプが現れた!」と拡散されやすい時代なんだから。

それから、オタ芸みたいな選挙芸も見てみたい。演説に合わせてみんなで踊るとか、候補者が「増税延期」と言ったら、「エンキ! エンキ!」とかけ声をかけるとか。

鉄道ファンに「撮り鉄」「乗り鉄」があるならば、選挙マニアの「撮り選」「乗り選」もありだ。候補者と同じ街宣車に乗ってみたくないか。選挙を手伝ってその政治家が好きなら一票入れればいいし、ダメだと思ったらほかの候補に入れればいい。誰に投票したかは秘密でいいんだから。

投票したい人が見つからなければ?

「政治がつまらないなら、自分で党をつくればもっと楽しめる」

特定の候補がいやなら、投票所や開票所でのアルバイトを勧めたい。かなりいい日給がもらえる。一石二鳥だ。

それでも投票したい人が見つからなければ、好きな芸能人の名前を書けばいい。俺は入れたい政治家がいない場合はいつも自分の名前を書いて投票している。例えば「安倍トランプ」って書いたらどうなるのか気にならないか?

実は開票所ではこうした「疑問票」を選挙管理委員会の人が調べている。その一票が有効か無効かを審査する係の人もいて、ちゃんとその票を見てくれる。笑いが取れるかもしれない。みんな知らないかもしれないが、開票作業は有権者なら誰でも見に行ける。

台湾の総統選では、カップルが選挙事務所で抱き合ってチューまでしていた政治はもっと身近でいい

政治家の事務所を訪問して、街頭演説を見て握手会に参加する。そしてボランティアをして投票し、開票所で自分の投じた一票の行方を見守る。そんなロングスパンでの選挙をぜひ楽しんでくれ!

◆『週刊プレイボーイ』27号(6月20日発売)「18、19歳 新有権者へのメッセージ」ではさらに映画作家・想田和弘、社会学者・西田亮介、28号(6月27日発売)の第2回では映画監督・森達也ほかのメッセージも掲載。そちらもお読みください!

(取材・文/畠山理仁)

大川豊OKAWA YUTAKA1962年生まれ、東京都出身。1985年、153社の就職試験に落ち、大川興業株式会社を設立。日本国内の選挙のみならず、アメリカ、台湾などの大統領、総統選挙にも自分の足で出向くなど、現場主義を第一とする、自称“世界初の芸人ジャーナリスト”