イギリスの国民投票を受け、世界経済が混乱する中、価格が急騰している金。金価格の急騰は世界的な危機の前触れとの説も ※写真はイメージです

国民投票でEU離脱─―。

イギリス国民のショッキングな選択に、世界が右往左往している。もちろん、日本もその例外ではない。離脱派勝利のニュースが流れるや、円は一時99円台に高騰。その反動で株価も日経平均で1286円の暴落(6月24日)となってしまった。

この余波をモロに受けたのがGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)。

2014年秋、安倍政権はGPIFの基本ポートフォリオ(資産構成)を見直し、株式投資の比率を50%(日本株25%、海外株25%)に倍増させた。国民から預かった年金資金で大量の株を買って株高を演出し、アベノミクスを成功させようという作戦だ。

しかし、イギリスのEU離脱で世界の株式市場は全面安となってしまった。当然、GPIFの保有株にも大きな損失が発生しているはずだ。

例えば、民進党の玉木雄一郎衆院議員はその損失額を、6月24日の一日だけで国内株1.9兆円、外国1.7兆円の計3.6兆円と試算している。経済ジャーナリストの須田慎一郎氏も言う。

「安倍政権はアベノミクスがもたらした株高でGPIFの運用益が30兆円以上になると自画自賛してきましたが、今や完全に潮目が変わりました。イギリスのEU離脱決定をきっかけに、今後は円高基調が続くと予想されます。

株式投資でGPIFが運用益を上げる前提は円安がもたらす株高が続くことですが、これからは、円高→輸出不振→輸出企業の利益減→株下落の局面が続く。つまり、これからはGPIFの株式運用は裏目に出るリスクが高いということ。さらに運用損が広がる恐れがあります」

損を被るのは年金を納めてきた国民

全国紙の経済部記者が続ける。

「仮に1ドル=105円としても日経平均が1万2000円まで下がれば、アベノミクスのスタート以来、GPIFが稼いできた株式運用益30兆円がすべて吹っ飛ぶ計算です。この運用損を被るのは年金を納めてきた国民。こんな丁半バクチのような危なっかしい株式運用法は直ちにやめるべきです」

だが、アベノミクスに前のめりの安倍政権にGPIFの株式運用比率を見直す動きは見えない。これでは年金の掛け金を納めてきた国民は泣きっ面にハチだ。イギリスのEU離脱の最大の被害者は日本国民、なんてことも!?

ただ、その一方でウハウハの層も。それはゴールドをコツコツと買ってきた人々だ。前出の須田氏が言う。

「イギリスのEU離脱交渉は2年はかかる。米中の景気も足踏み状態だし、アベノミクスの先行きも見えない。リスク要因が多すぎて、今後、株価がどうなるか、専門家でも予測が難しくなっている。そのため、リスクの高い株や債券を売り、現金や地金を保有しようという動きが世界的に強まっているのです。そうなれば金価格は右肩上がりに上がるはず。金をコツコツと買ってきた人は笑いが止まらないでしょうね」

一説には世界的投資家のジョージ・ソロスもイギリスのEU離脱を予想し、事前に金を買いあさって莫大(ばくだい)な利益を手中にしたのだとか。

金は月々数千円から買える。長引きそうなイギリスのEU離脱ショックに備え、買ってみては…。

(取材・文/本誌ニュース班)