「候補者を注目度や経歴で『選別』し、その扱いに差をつけるようなことは、極めて不当」と訴える古賀氏 「候補者を注目度や経歴で『選別』し、その扱いに差をつけるようなことは、極めて不当」と訴える古賀氏

31日の投開票日まで1週間を切った都知事選。

連日、「主要3候補」の動向が大きなニュースとなる中、『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、偏った都知事選報道のあり方に疑問を呈す!

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都知事選の報道にはどうにも首をひねってしまう。

大量得票が見込め、知事選レースの上位に食い込みそうな増田寛也、小池百合子、鳥越俊太郎の3氏を「主要3候補」と呼び、その動向や政策を大きくニュースにする一方で、残りの候補についてはほとんど触れない。

東京都知事選には21人もの候補がいる。そのひとりひとりに都政への思いがあり、やりたい政策がある。なのに、注目度の高い候補のみをフォーカスし、残りは黙殺する。これほど失礼で不公平なことはない。

似た傾向は候補を招いて行なわれる公開討論会でも見受けられる。告示日直前の7月12日、港区・赤坂区民ホールで行なわれた公開討論会の登壇者は小池氏、増田氏ら5候補のみ。時間的制約を理由に議員や首長の経歴のある候補のみに限ってしまった。

これに怒ったのが都知事選立候補者の常連、「スマイル党」総裁のマック赤坂候補だ。彼は「自分も供託金を払っているのに登壇できないのはおかしい」と抗議し、会場からつまみ出されるという騒動が起きた。これは彼の主張に分がある。

候補者を注目度や経歴で「選別」し、その扱いに差をつけるようなことは極めて不当だ。特に「主要3候補」ばかりフォーカスするテレビ報道ぶりは異常だ。これでは、ほかの候補はほとんど勝ち目がない。

本来は、日の当たらない候補の優れた公約を掘り起こすようなことこそ、電波を占有しているテレビ局の責務であるはず。テレビ局は恣意的な「基準」で「主要」かどうかを判断しているようだが、そこにはなんの正当性も見いだせない。

石田純一氏の処遇にも疑念を抱いている

基準自体が公表されていないのも問題だ。3候補だけを特別に優遇するのは、放送法4条にある「政治的に公平であること」という定めにも明らかに違反している。

もう一点、テレビ界に関して懸念を抱いていることがある。知事選出馬検討を表明したタレント・石田純一氏の処遇だ。

出馬しなかったとはいえ、この意思表明によって石田氏はテレビ出演がキャンセル扱いになったまま。しかも、キャンセルは告示前から始まっていたという。百歩譲って、選挙期間中の出演自粛までは認めたとしても、もし選挙後も同じような状況が続くなら大問題だ。

放送法3条には「放送番組は何人からも干渉され、又は規律されることがない」とある。8月以降、テレビ局がスポンサーの意向や一部の世論の反応を過剰に気にして石田氏の番組出演を認めないのならば、「他者から干渉されて、石田氏を干した」ということになる。それは放送法3条違反の行為そのものだ。

多様な意見を伝えることが、国民の「知る権利」の保障につながる。それが放送法の趣旨だ。その趣旨をテレビ、そして放送法の枠外にある新聞・雑誌なども尊重してほしい。

大手マスコミに“泡沫”のレッテルを貼られている候補について、その動向や政策を詳しく伝えるべきだ。政党や業界団体の推薦がない候補の政策は、しがらみがない分、ユニークで実効的なものも少なくない。

そして、今こそBPO(放送倫理・番組向上機構)の出番だ。今回の都知事選での各局の放送についてしっかり検証し、問題点を明らかにして、改善案を打ち出してほしい。

●古賀茂明(こが・しげあき) 1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元幹部官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して2011年退官。著書『日本中枢の崩壊』(講談社)がベストセラーに。近著に『国家の暴走』(角川oneテーマ21)

(撮影/山形健司)

●発売中の週刊プレイボーイ32号(7月25日売り)では都知事選の候補者21人全員を直撃し一挙紹介! そちらもご覧ください。