中国上空を飛行中の旅客機内から、島根県在住の女子高校生がたまたま撮影した写真。飛行機雲のような筋が地平線の向こうから上昇し、光体がふたつに分かれていったという 中国上空を飛行中の旅客機内から、島根県在住の女子高校生がたまたま撮影した写真。飛行機雲のような筋が地平線の向こうから上昇し、光体がふたつに分かれていったという

日本時間8月24日午前5時半頃、中国・黄海上空を南へ向けて飛行していた、フィンランド・ヘルシンキ発福岡空港行き「フィンエアーAY75便」。その機内から、島根県在住の女子高校生が「飛行機雲のような筋が真っすぐ上がり、やがて光体がふたつに分かれた」のを目撃し、とっさに撮影した。

その現象が見えたのは機体の東側――つまり、日本海の方角である。偶然にも撮影されたこの写真は、専門家の分析によれば、ほぼ間違いなく北朝鮮が発射実験に成功したSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)であるという。

日本海に面した北朝鮮北東部の咸鏡南道(ハムギョンナムド)・新浦(シンポ)付近の海中から発射され、史上初めて日本の防空識別圏内に落下したこのミサイルの正体は何か? 軍事アナリストの毒島刀也氏はこう分析する。

「これは日本でも有名になったテポドンやノドン、ムスダンではなく、北朝鮮で『北極星1号』、NATOコードネームでは『KN-11』と呼ばれる謎の多いミサイルです。今年4月23日の発射実験とその後に公開された燃焼試験の映像から、固体燃料を使った2段式ミサイルと推測され、サイズは直径1.5m、長さ9.0m、発射重量14t程度と見積もられています」

確かに、撮影した女子高校生の「光体がふたつに分かれた」との証言も、ミサイルが2段式であることを裏づける。毒島氏が続ける。

「今回の発射実験では、日露両国の領海に落ちることを避けるため、高く上げて垂直に近い角度で落下するロフテッド軌道を採っていました。そのため飛翔距離は500㎞程度にとどまりましたが、弾体の規模からみて、実際の射程は2千kmほどあると考えられます」

当然、東京や大阪といった大都市も標的に

KN-11の潜水艦からの発射実験が「成功した」といえるのは今回が初めてだが、射程2千kmとなると、北朝鮮沿岸から日本全土を狙えることになる。『コリア・レポート』編集長の辺真一氏はこう警告する。

「北朝鮮はミサイルの標的について『太平洋上の米軍基地』と明言し、沖縄や青森・三沢、神奈川・横須賀を名指ししています。同様に、ステルス戦闘機F-35が配備される山口・岩国や長崎・佐世保もターゲットでしょう。さらに、戦争状態になれば当然、東京や大阪といった大都市も標的となります。

従来、北朝鮮のSLBM実戦配備にはまだ数年はかかるといわれていましたが、今回の発射実験成功を見ると、来年中には配備される可能性が高そうです。問題は、現状の日本のMD(ミサイル防衛)システムではレーダーも電波傍受アンテナも北朝鮮本土に向けられ、地対地ミサイルの迎撃に特化していること。潜水艦からの発射にどれだけ対応できるか疑問です」

四方を海に囲まれた日本にとって、潜水艦から放たれるSLBMは、地上発射の弾道ミサイルとは別次元の脅威となるのだ。しかも、核兵器の開発を進める北朝鮮が、KN-11に核弾頭を搭載することに成功したら、アジアの軍事バランスは崩壊寸前となる。

北朝鮮のSLBMの脅威に「撃たれる前に撃つ」ことができない日本の自衛隊は対抗できるのか? そして、北朝鮮が開発中と噂される新たな“最終兵器”とは何か? 発売中の『週刊プレイボーイ』38号で詳しく検証しているので、ぜひご覧いただきたい。

(取材・文/世良光弘)

■週刊プレイボーイ38号「金正恩の最終兵器(リーサルウェポン)『潜水艦から核ミサイル』が日本全土を射程に!!」より