「民進党が対案路線を本気で歩むのならば、安倍自民が掲げられない、痛みを伴う改革を」と訴える古賀茂明氏

民進党の代表に就任し、野党第1党としての意気込みを示す蓮舫氏。

しかし、『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、蓮舫代表の打ち出す「対案路線」に不安を隠さない。

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「民進党を選択してもらえる政党にしていく!」

臨時国会がスタートし、そう意気込む蓮舫(れんほう)代表だが、その前途はどうにも厳しそうだ。

不安のタネは蓮舫代表が打ち出す「対案路線」にある。これは、ただ与党を批判するだけでなく、“対案”を出して、責任ある野党第1党の姿を示し、いずれは政権を奪い取ろうというもの。

その意気込みに期待したい、と言いたいところだが、実は生半可な「対案路線」は、逆に民進党の存在感を弱めてしまうリスクがあるということには十分な注意が必要だ。

蓮舫代表は対案の目玉として「人への投資」を打ち出している。子育てや教育などに予算を配分することで、与党との違いを出そうという作戦なのだろうが、したたかな安倍内閣は黙っていない。これまでと同じく、野党の政策をパクり、自らの目玉政策として実現させるだろう。

例えば、「同一労働同一賃金」や「最低時給1000円」「給付型奨学金」といった政策はもともと民進党がマニフェストに掲げていたものだった。

それを安倍内閣は国民受けする政策だと見るや、「1億総活躍プラン」に取り入れた。自民党は与党として予算づくりを主導できるから、政策の財源もしっかりと確保することができる。一方の民進党は野党なので、どうしても財源の裏づけがないままの「対案」となってしまう。

私が特にまずいなと思うのは、「人への投資」というキャッチフレーズの“前段”が欠けているという点だ。09年に旧民主党が政権を担ったときのキャッチフレーズでは「コンクリートから人へ」という具合に、過剰な公共事業からの脱却を明言した。これによって、既得権益と戦うことを示し、実際に公共事業を大幅にカットした。

蓮舫体制はスタートダッシュでつまずいた

しかし、蓮舫代表の掲げるキャッチフレーズにはそれがない。つまり、改革の道筋を示せない、単なるバラマキだ。同じバラマキなら、先述したように予算編成権を持つ自民党に勝てるわけがない。

そうして民進党がバラマキ政策を主張している間にも、同じ野党の日本維新の会が公務員改革や政治資金改革を打ち出して独自性をアピールしようとするだろう。民進党は、連合に公務員の組合があるので、こうした分野で維新を上回る改革案を提示できない。

さらには、もうすぐ小池百合子都知事による地域政党が旗揚げされる。この小池新党もまた「都民ファースト」を掲げ、都の既得権益に切り込む姿勢を打ち出すことが予測される。

そうなれば、民進党の存在感は霞(かす)むばかり。それでなくても幹事長に不人気の野田佳彦元首相を選んで反発を招いたり、新潟県知事選で独自候補を擁立できないなど、蓮舫体制はスタートダッシュでつまずいたとの印象は否めない。

もし、民進党が対案路線を本気で歩むのならば、安倍自民が掲げられない、痛みを伴う改革を掲げなければならない。

●古賀茂明(こが・しげあき)1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元幹部官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して2011年退官。著書『日本中枢の崩壊』(講談社)がベストセラーに。近著に『国家の暴走』(角川oneテーマ21)