お互いに手を差し出し、手のひらを合わせ、力をギュッと入れる行為=握手。友情、和解、契約成立など、ビジネスで、プライベートで、握手をする機会は多いかもしれない。
だがキミは今まで握手についてきちんと考えたことはあっただろうか? ただ漫然と手を差し出してはいなかったか?
そこで、北海道で長年厳しい選挙戦を勝ち抜き、さらに世界を相手にタフな交渉を行なってきた元衆議院議員の鈴木宗男氏に、その極意を聞いた!
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―政治家のなかでも先生は握手のイメージが強いです。
鈴木 私は選挙のとき、一日に5000人と握手するよう心がけてましたね。「鈴木宗男といえばターボ付きスニーカーだ」と言われるぐらい、フットワーク軽くどこでも握手しました。
―なぜそこまで握手を?
鈴木 それだけ厳しい選挙をしていたんです。われわれは応援してもらってなんぼ。ひとりもおろそかにできない。そして握手をすれば、その人が応援してくれるかわかるんです。力強く「頑張ってください」と来たら応援してる。力が入ってないとダメ。選挙戦が終わればほぼ票が読めた。1割と違いません。
―すごい! 手の握り方の極意ってあるんですか?
鈴木 男の人はこちらから手を出して握ってもらう。女の人は強く握ると嫌われることもあるので、向こうから手を出してもらって、そこに合わせます。でも、たまにいやがらせの握手もあるんですよ。こっそり爪を立ててくる。だから握手をするときは絶対に気を抜かない。自分を守るために最低限の力は入れておきますね。でも今の政治家を見ていると、ただポーズとして握手している人が多いですね。
―握手をしてるときに、うまく自分を印象づけるには?
鈴木 やっぱり目ですね。1秒でもしっかりアイコンタクトして、ギュッと握手する。でも政治家は相手の顔や名前を覚えることも大事です。そのためにノートや名刺に誰々の紹介とか、メガネとか髪型とか、特徴を書いて覚えました。
記憶に残る中川一郎先生の握手
―やっぱり覚えていてもらうとうれしいです。
鈴木 これは田中角栄先生に教えてもらったんだけど、たまに意地の悪い人から「私の名前忘れたでしょ」って言われると。でも絶対に忘れたって言わない。相手が根負けして、例えば「鈴木です」って言ったら、すかさず「それは知ってる。今は下の名前を思い出そうとしていたんだ!」って言うんです。聞いた人は喜びますよ。「田中先生はフルネームで覚えようとしてくれていた」と。田中角栄伝説のひとつですね。
―今までで記憶に残る握手はありますか?
鈴木 18歳のとき、中川一郎先生が大学の保証人になってくれたんです。そこで「鈴木くん、頑張れ。何か困ったことがあったら来い!」って、握手された。その頃は純情だから、特別に声をかけられたと感激したものです。今思えば政治家の常套句(じょうとうく)でしたね(笑)。あとは2000年にクレムリンでプーチンさんと会ったとき。手のぬくもりと迫力が今でも残ってますよ。
―握手というのは、昔から政治家にとって欠かせないものなんですね。
鈴木 でも政治家が選挙で握手を始めたのはケネディ大統領からだと思います。昔はふんぞり返っていてよかったと思うんですけど、テレビの時代になったというのもあるのでしょう。ケネディさんが握手するダイナミックさ、庶民性。あの姿が選挙には必需品となりました。
―最後に、宗男さんにとって握手とは?
鈴木 相手を知る大事なコミュニケーションですね。親しみなり、尊敬なり、敬意を表するから握手をするんです。しないと他人行儀ですよ。若い人たちも握手をすることで、人間力を高めることが大事だと思います。
●鈴木宗男(すずき・むねお) 1948年1月31日生まれ、北海道出身。新党大地代表。中川一郎の秘書を経て、1983年衆議院議員総選挙で初当選。2002年に国策捜査で逮捕・起訴、2010年に収監。現在は来年4月の公民権停止満了後の議員復活に向け全国行脚中
★アイドル界の達人、SKE48・須田亜香里ちゃんの握手の極意は、明日配信予定です!
(取材・文/関根弘康 撮影/武田敏将)