崔順実(チェ・スンシル)国政介入疑惑に揺れる韓国で、朴槿恵(パク・クネ)大統領の退陣を求める声が日々強まっている。11月12日、ソウル光化門(クァンファムン)広場で開かれたキャンドルデモの参加者はついに100万人(警察発表26万人)を超えたほどだ。
だが、朴大統領がその要求に耳を傾ける様子はない。15、16日に予定されていた検察からの事情聴取も土壇場でキャンセル。韓国紙の東京特派員が大統領の思惑をこう説明する。
「崔順実容疑者の起訴予定日は19日でした。その前に事情聴取に応じると、崔容疑者の起訴状に朴大統領の陳述内容が反映され、将来に訴追されたときの証拠になりかねない。今回のドタキャンはそれを避けるための悪質な時間稼ぎです。朴大統領は辞任するつもりなどまったくない。記者の間では『朴大統領は任期いっぱい、大統領職に居座るつもりなのでは?』との見方が急速に広まっています」
野党第一党の「共に民主党」関係者がこう反発する。
「国民はとっくに見限っているのに、いまだに自分は高貴なお姫さまとカン違いし、権力者ぶっている。これ以上の居座りは許せない。大統領が音を上げて退陣するまで、われわれは大規模なデモを続けるつもりです」
では野党はどのような大統領退陣シナリオを描くのか?
「即時辞任を朴大統領は受け入れる気がない。また、実現したとしても60日以内に大統領選挙を実施しなければならず、非現実的なシナリオです。わずか60日間では野党側も大統領選の準備が整いません」(前出・東京特派員)
それでは次善のシナリオは?
「有力なのは“秩序ある退陣”です。大統領に具体的な退陣時期を確約させ、その間、国会が指名する首相が国政を担当するというものです。国会は現在、野党が多数を握っている。これなら、野党主導の国政を行なうことができ、しかも次期大統領選の準備もできます」
ただ、このシナリオも朴大統領が徹底抗戦して退陣を拒否すれば、実現は不可能だ。
「そのときは弾劾決議で朴大統領を引きずり降ろすしかない。弾劾は国会議員(定数300)の3分の2の賛成で可決できます。とはいえ、野党系勢力は171名。可決には与党セヌリ党から29人の賛同者を確保しなくてはならず、ハードルが高かった。ところが、ここにきてセヌリ党議員の4割を占める非朴槿恵派が弾劾賛成に転じたため、可決の見通しが立つようになったんです」
朴大統領はピンチをどう切り抜けるのか? 混沌とする韓国の政治から目が離せない。