米西海岸に“マリファナ・ベルト”ができあがったことにも注目と語るモーリー氏 米西海岸に“マリファナ・ベルト”ができあがったことにも注目と語るモーリー氏

『週刊プレイボーイ』本誌で「モーリー・ロバートソンの挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンがアメリカで行なわれた大麻合法化の是非を問う住民投票について語る。

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トランプ・ショックが大きすぎてあまり目立ちませんでしたが、先日の米大統領選と同時に9つの州で大麻合法化の是非を問う住民投票が行なわれました。その結果、新たにカリフォルニア、ネバダ、マサチューセッツの3州で大麻の嗜好(しこう)品使用、フロリダなど4州で医療用使用が解禁されることになりました。

これで、全州の過半数を超える28州とワシントンD.C.が医療用を、8州が嗜好用を認めたことになります。今も連邦法では大麻使用は禁止されていますが、「各州の意思」が強く尊重されるアメリカ特有の事情もあり、大麻解禁の流れは止まりそうにありません。

“モラルマジョリティ”やキリスト教右派が力を持っていたかつての米社会では、大麻は当然のように忌避されていました。しかし近年―特に2000年代以降は、まさに現実的な問題として議論の俎上(そじょう)に上っています。実際の意識調査の結果を見ても、高齢層を中心に今も大麻を潔癖に嫌う人がいる一方で、「大麻程度のドラッグは許容すべきだ。 経験によって学べる適度な用量・用法を守れば問題はない」と考える人も多く、全米の過半数の人々が嗜好用大麻を容認しています

これはアメリカの大麻解禁派の巧みなロビー活動の賜物(たまもの)でもありますが、医療用にせよ嗜好用にせよ、先行解禁した州で税収アップ、警察や刑務所の負担軽減といった便益が実証されたことも追い風となっているでしょう。

アメリカに限らず、世界のトレンドに…

そんななかで今回、カリフォルニア州が嗜好用大麻の解禁を決めたことは大きな意味を持ちます。全米最大の経済規模を誇る同州の2015年の州内総生産は、フランス、イタリア、カナダなどのGDPを超え、国家と並べてランクづけしても世界第6位。議員数も圧倒的に多く、波及力の大きさはこれまでの“解禁州”とは比べものになりません。

また、今回の一連の住民投票で米西海岸に“マリファナ・ベルト”ができあがったことにも注目です。西海岸では大麻関連のスタートアップが熱を帯びており、今後はゴールドラッシュならぬ“グリーンラッシュ”が起こると予想されていますが、ビジネス上の最大のネックは大麻の使用が連邦法で禁じられていること。そのため貸し渋りをする銀行もあるようで、(来春から嗜好用大麻が解禁される)カナダに拠点を移すスタートアップもあるといいます。

今後数年で1兆円を超えるともいわれる大麻の巨大市場を、ビジネスマンのトランプ新大統領が指をくわえて見ているとは考えにくい。また、今回の選挙では上下院とも大麻解禁に慎重な共和党が多数派を維持しましたが、カリフォルニアをはじめとする解禁州で選出された議員たちは、州民の意に反する行動をとり続けるわけにはいきません。経済学的な力学が強く働くことで、近い将来、連邦法改正の動きが活発化するのは必至でしょう。

大麻解禁はアメリカに限らず、欧米各国で進んでいます。この世界的な大波は、日本の「ダメ、ゼッタイ」などというちっぽけな防波堤を一瞬にしてのみ込んでしまうでしょう。そのとき、いきなり来た“黒船”に慌てふためくのか? それとも、あらかじめ心構えを持っておくか? そろそろ現実を見るときではないでしょうか。

●Morley Robertson(モーリー・ロバートソン) 1963年生まれ、米ニューヨーク出身。国際ジャーナリスト、ミュージシャン、ラジオDJなど多方面で活躍。フジテレビ系報道番組『ユアタイム~あなたの時間~』(月~金曜深夜)にニュースコンシェルジュとしてレギュラー出演中!! ほかにレギュラーは『NEWSザップ!』(BSスカパー!)、『モーリー・ロバートソン チャンネル』(ニコ生)、『MorleyRobertson Show』(block.fm)など