トランプ政権は国防の重要ポストに中国封じ込めのエキスパートを置くだろう。そのひとりが海軍政策の専門家、ランディ・フォーブス下院議員だ

中国の海洋進出が止まらない。すでに南沙諸島の3つの人工島に空港を建設し、航空機を配備。10月末には南シナ海のウッディー島(永興島)に中国人民解放軍の航空部隊が駐屯を開始したとのニュースも流れた。中国の南シナ海支配は点から線、面へと拡大しつつある。

尖閣諸島の海域もキナくさい。この11月も9日連続で、中国海警船が尖閣諸島近辺の接続海域に侵入していた。中国は現在、海警船に76mm砲を搭載するなどの武装化を着々と進めているだけに、ひどく不気味だ。

その一方で、南沙諸島問題で中国と対立していたフィリピンは、ドゥテルテ大統領が10月に訪中。巨額の経済支援と引き換えに、親中国へとかじを切る動きを見せている。ドゥテルテは「協力は経済だけ。安全保障では妥協しない」と説明するが、フィリピンが中国の軍門に屈したことは誰の目にも明らかだ。

このまま日本も、中国の暴走を止められずにジリジリと圧迫されてしまうのか? しかし、元外務省主任分析官の佐藤優氏はこう断言する。

「今、日本には、中国の暴走を抑えるふたつの神風が吹いています。それは、(1)トランプ大統領の出現(2)『第2イスラム国』の誕生です。これにより、中国はしばらくの間、海洋進出する余力を失うことになるでしょう」

なぜ、(1)(2)が中国の海洋進出を阻む神風となるのか?

まず(1)について、その根拠を説明するのは米国防シンクタンクで海軍戦略アドバイザーを務める北村淳氏だ。

「トランプ政権は国防費の増大、海軍の増強に乗り出すでしょう。そして、トランプ政権の各重要ポストを担うと予測されている人物を見れば、中国封じ込めのプロが並んでいることがわかります。

例えば、ペンタゴン(国防総省)や米海軍で、国防長官になると噂されているジム・タレント前上院議員(元ミズーリ州選出)は米中経済安全保障委員会のメンバーで、アンチ中国派として有名です」

さらに国防次官、海空陸3軍の長の候補にはバリバリの武闘派の名前が浮上している。 つまりトランプ新政権では、オバマ政権から煙たがられたり、クビにされた軍事のプロや対中強硬派が次々と返り咲く公算が大なのだ。このアンチ中国のメンツがスクラムを組み、中国の海洋進出を阻んでくれるというわけだ。

それでは(2)の「第2イスラム国」の誕生は、中国の動きをどう牽制する? そもそも「第2イスラム国」とはなんなのか?

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(取材・構成/小峯隆生 写真/アフロ)

■週刊プレイボーイ50号「トランプと『新イスラム国』が日本の神風になる!!」より