ポスターにデカデカと「新人」「現職」と書くなど、ふたりの青木茂氏は協力して注意喚起した

佐賀県唐津市で珍事! 1月29日投開票の市議選で、漢字も読み方もまったく同じふたりの候補が出馬したのだ。その名前は「青木茂(あおき・しげる)」。ひとりは3期目のベテラン現職(56歳)、もうひとりは今回の市議選が初チャレンジの新人(43歳)だ。

唐津市で同姓同名候補が同時に出馬するのは初で、市選管は悩んだ。「青木茂」の記名だけでは、どっちの票か判別できない。市選管は協議した結果、投票用紙に候補者の名前に加え、(1)年齢、(2)現職、新人の別を有権者に書いてもらうことに。

しかし、そのことを大々的に告知できない。というのも、ふたりに注目が集まり、ほかの候補者が不利になるからだ。となると、「青木茂」両名がそれぞれ注意喚起をしなくてはいけない。“現職”の青木茂氏は、選挙戦をこうふり返る。

「有権者に私の出馬を知ってもらうだけでも苦労なのに、もうひとり『青木茂』が立候補したこと、私への投票を有効にするためには『現職』『56歳』という情報を書き添えるということを知ってもらわないといけない。これは大変だと考え、辻立ちの回数をこれまでの選挙の5、6倍に増やしました」

「新人の青木さんは『青木議員』、私のことは『茂議員』と呼んでください」(右が現職の青木茂氏)

もちろん、“新人”の青木茂氏も周知を徹底したが、それでも選挙中は支持者が事務所を間違えて激励に訪れるなどの混乱があったという。

そして迎えた投開票日、結果は…両名、めでたく当選! 定数30人に対して32人が立候補という、“勝率約94%”のレースだったので、素直にスゴいとは言いにくいけど。

ちなみに、得票数は“現職”の青木氏は2947.697票(3位)。“新人”の青木氏は1522.302票(27位)だった。

なんで小数点? これは投票用紙に「青木茂」としか書かれていない、判別不能票が826票もあったせい。事前の取り決めで判別不能票は得票率に応じて分け合うことになっており、現職に544.697票、新人に281.302票が振り分けられた。

まあ、終わりよければすべてよし。この結果にふたりとも満足と思いきや、新人の「青木茂」氏からこんな不満が。

「無効票が5票あったようですが、その中に『坊主のほう』『ハゲのほう』と書かれたものがあったと聞きました。私のツルツル頭を見てもらえばわかると思いますが、どう考えてもその票は私への投票だったと思うんですけどね」

4年後の市議選はふたりとも現職扱いになり、票の判別はさらに難しくなる。というわけで、市選管にアドバイス。次回選挙はふたりの毛髪の状態を識別情報に加えたら?