3.11後も積極的に世界の国々と原子力協定を結び、原発輸出のために力を注いできた日本政府。なぜ原発政策を根本から見直すことなく、原発輸出に突き進むのか?

原発事業の巨額損失が明らかになり、倒産の危機に直面している東芝。日本を代表する巨大企業の崩壊は製造業のみならず、社会全体に大きな衝撃を与えている。

原発事業を担う東芝の子会社ウェスチングハウス(以下、WH)が計上した損失額は、明らかになっているだけでも7千億円以上! 今後、その額は1兆円を超える可能性もあるという…。

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東芝が世界有数の原発メーカー、アメリカのWHを買収して子会社化したのは2006年10月のことだった。

アメリカの原子力産業は1979年に起きたスリーマイル島原発事故をきっかけに衰退。WHも90年代に入って経営が悪化し、99年にはいったん英国核燃料会社(BNFL社)の傘下に入ったが、東芝はそのWHを、ライバルの三菱重工が提示した2倍近い6467億円で買収したのだ。

「東芝がWHを買収した背景には、当時のアメリカ、ブッシュ政権が『原子力ルネッサンス』を訴え、原発建設を援助するエネルギー政策を打ち出していたことがあります」

そう語るのは、元原子力プラント設計技術者で、東芝の原子炉設計に携わっていた後藤政志(まさし)氏だ。

「かつて東芝は幅広い事業分野を抱える巨大なオールラウンダーでした。ところが2000年代に入った頃から、事業の『選択と集中』を進め、半導体メモリー事業と原発を中心としたエネルギー事業のふたつに絞り込んだのです。

当時の東芝経営陣は、原発が将来的に安定した収益につながるという幻想を抱いていたのでしょうが、それは大きな間違いでした。なぜなら原子力ほど社会の変動の影響を受けやすい産業はないからです。エネルギー需要の変化や各国の政策はもちろん、一度でも事故が起きれば事業が一気に崩壊することもありうる。それは3.11前からわかっていたことでした。

そんなリスクの高い原発事業を、企業経営の軸に据えることがおかしかった。私には東芝の経営トップらが、原発事業のなんたるかをまったく理解していなかったとしか思えません」(後藤氏)

実際、アメリカでは9.11同時多発テロ以降、原発の安全基準見直しに伴う認可の遅れが生じたり、建設コストが高騰。また、アメリカはその後の「シェールガス革命」でエネルギー政策を大きく転換。風力など再生可能エネルギーの需要も伸びるなか、原発メーカーは厳しい状況に追い込まれ、原発の新設計画の雲行きは怪しくなっていったのだ。

◆この続きは『週刊プレイボーイ』12号(3月6日発売)「東芝が墜ちた日米原子力マフィアの蟻地獄!!」にてお読みください!

(取材・文/川喜田 研 取材協力/姜誠)