『週刊プレイボーイ』本誌で「モーリー・ロバートソンの挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが極右「Alt-Right(オルト・ライト)」のアイドル的存在だったマイロ・ヤノポロスが“陥落”した理由について語る。
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トランプ大統領の誕生を強力に後押しした極右ネットメディア『ブライトバート・ニュース』のエース編集者で、過激な新興右派政治運動「Alt-Right(オルト・ライト)」のアイドル的存在だったマイロ・ヤノポロスがついに“陥落”しました。昨年、人知れず公開されたポッドキャスト番組で、ペドファイル(小児性愛者)を擁護する発言をしていたことが発覚したのです。
この騒動に対して、周囲の火消しの動きは迅速でした。マイロはブライトバート・ニュースの編集職を辞任し、巨額の書籍出版契約も解除され、出席予定だった「保守政治行動会議(CPAC)」の招待も取り消されてしまったのです。
問題の番組で、マイロは「神父から手ほどきを受けたから、今の俺はフェラチオがうまい」と明かしつつ、ぺドファイルを容認しているかのような発言を行ないました。自分がゲイであるとか、ペドフィリア(小児性愛)の被害者であるという“マイノリティの立場”を利用して、周囲の人間をマウンティングしたり、悪びれることなく過激発言を連発する――まさにマイロの常套(じょうとう)手段です。
そもそもマイロは、“言ってはいけないこと”を口にすることで注目を集めてきた人物。人種差別やムスリム差別、女性差別……なんでも言いたい放題のアナーキーなスタンスがAlt-Rightの若い人々に熱狂的に支持されました。
一方、旧来の保守層からすると、マイロは自分たちの“外では言えない本音”の代弁者であると同時に、民主党からの政権奪取という目的のために有用な人材でもあり、積極的には支持せずとも黙認してきたという経緯があります。
マイロの暴言が命取りになった理由
では、なぜ今回の“暴言”が命取りになったのか。それは、欧米社会においてペドファイルは問答無用のタブーだからです(これは日本のロリエロアニメやJKビジネスがどう見られているかを理解する際にも重要な視点です)。特に、共和党の支持基盤であるキリスト教右派の人々にとっては、ぺドファイル擁護というのはどんな言い訳も許されない“ギロチンもの”の発言なのです。
今回、問題の動画を拡散したのは「The Reagan Battalion(レーガン軍団)」と名乗るSNSアカウントです。まずは短い動画をアップし、マイロが「これは編集されたものだ」と反論すると、すかさず長尺バージョンを拡散して息の根を止める――実に周到な“公開処刑”でした。
レーガン軍団がどこからネタを仕入れたのか、「すぐに出した」のか「寝かせておいた」のか…など、詳細は不明ですが、少なくともマイロにとっては最悪のタイミングでした。広く注目されるCPACへの参加が直前で破談になったことが引き金となり、マイロは保守運動からの撤退を余儀なくされたからです。
さらに陰謀めいた見方をすれば、トランプ大統領の側近だったマイケル・フリン大統領補佐官の辞任直後というのも、偶然というには都合がよすぎるようにも思えます。
共和党主流派には、旧来型政治の破壊者として振る舞うトランプ大統領の影響力をそぎ落とし、「普通の共和党政権」に戻したいという思惑があります。フリンとマイロを撃ち落とし、残る“本丸”はスティーブ・バノン首席戦略官――これはうがちすぎた見方でしょうか。次なる展開を注視しましょう。
●Morley Robertson(モーリー・ロバートソン) 1963年生まれ、米ニューヨーク出身。国際ジャーナリスト、ミュージシャン、ラジオDJなど多方面で活躍。フジテレビ系報道番組『ユアタイム~あなたの時間~』(月~金曜深夜)にニュースコンシェルジュとしてレギュラー出演中!! ほかにレギュラーは『NEWSザップ!』(BSスカパー!)、『モーリー・ロバートソン チャンネル』(ニコ生)、『MorleyRobertson Show』(block.fm)など