北朝鮮のミサイル攻撃が起こらないといえる理由は? 鈴木宗男氏(左)と佐藤優氏が分析する 北朝鮮のミサイル攻撃が起こらないといえる理由は? 鈴木宗男氏(左)と佐藤優氏が分析する

鈴木宗男・新党大地代表と、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏による対談講演会「東京大地塾」

安保理やアメリカの警告を無視して、4月には3回も弾道ミサイルの発射実験を行なった北朝鮮だが、結果はすべて失敗に終わっている。

しかし、これは単なる“発射失敗”ではないと、佐藤優氏は分析する。今、北朝鮮で何が起こっているのか? 「危険な米朝“サイバー戦”の実態に続き、解説する!

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鈴木 北朝鮮情勢では、中国の出方が非常に重要になってきますね。

佐藤 はい。4月6、7日に行なわれたトランプ大統領と習近平主席の米中首脳会談から事態が急変したとみています。

この会談では何が話し合われたか? 私のところにある情報を統合すると、トランプは習近平に「北朝鮮のトップを転落させても、北朝鮮を中国の影響下に置いても構わない。とにかく弾道ミサイルと核兵器の開発、発射を止めてくれ」と伝えた。そして、習近平は今のところトランプに言われたように水面下できちんと動いている。

日本の中国ウオッチャーの間では「中国が北朝鮮を制御するのは難しい」との見方が大半ですが、アメリカの中国ウオッチャーの間では「中国が本気なら、北朝鮮に大きな影響力を行使できる」との見方が多い。私はアメリカの見方が正しいと考えています。

実は、北朝鮮のサイバー部隊は中国の遼寧省丹東市に本部を置いているとみられます。北朝鮮は独自のサイバーネットワークを持っていないので、中国から借りているんですよ。

米中協力のポイントのひとつに遼寧省の北朝鮮のサイバー拠点の封鎖は入っているだろうし、現段階で中国はそれに成功しているでしょう。これは北朝鮮情勢を考える上で非常に大きいです。北朝鮮からすると、アメリカからのサイバー攻撃に対応する力をそがれるわけですから。

注視すべきは韓国のアメリカ人の動き

鈴木 北朝鮮に関しては様々な情報が錯綜しています。どのように情勢を見極めればよいでしょうか?

佐藤 韓国国内にいるアメリカ人や日本人の動きに注目するというのがひとつの方法です。

韓国には海外で長期滞在をするために必要な在留届を提出している人だけでも5万人の日本人がいます。アメリカ人は10万人です。届けを出していない人を含めると、日本人もアメリカ人も倍くらいはいるかもしれません。

もしアメリカが北朝鮮を攻撃すれば、北朝鮮は長距離砲と長距離ロケット弾を使ってソウルなどの大都市を火の海にするでしょう。なので、アメリカは攻撃の前に十数万人を韓国から逃がさなければならない。日本もそうです。

しかし、仮に航空便だけで考えると在韓邦人5万人を退避させるのに2週間はかかる。もちろん10万人以上いるアメリカ人の避難にもかなりの時間がかかります。まだ韓国でそうした人の動きが見られないということは、しばらく北朝鮮には何も起こらないということです。アメリカが北朝鮮を攻撃する前には日韓と協議をするはずですしね。

しかし、金正恩がいる限り緊張が続くことは間違いないです。1954年の朝鮮戦争終結以来最大の緊張という人もいるくらいですから。

だから、逆に言えば韓国のアメリカ人たちが急に逃げだしたら大変なことが起きますよ。

(取材・文/小峯隆生 撮影/五十嵐和博)

●鈴木宗男(すずき・むねお) 1948年生まれ、北海道出身。新党大地代表。衆議院議員時代から長年北方領土問題の解決を目指し奔走している。4月30日に公民権が回復し、7年ぶりの政界復帰を目指す

●佐藤優(さとう・まさる) 1960年生まれ、東京都出身。外交官時代は、主任分析官として対ロシア外交の最前線で活躍。外務省退職後は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞するなど、作家・評論家として活動中

■「東京大地塾」とは? 毎月1回、衆議院第二議員会館の会議室を使って行なわれる新党大地主催の国政・国際情勢などの分析・講演会。鈴木・佐藤両氏の鋭い解説が無料で聞けるとあって、毎回100人ほどの人が集まる大盛況ぶりを見せる。次回の開催は5月25日(木)。詳しくは新党大地のホームページへ