「覚悟を決めて、加計学園スキャンダルの疑惑解明に尽力してほしい」と前川前文科次官にエールを送る古賀茂明氏

学校法人「加計学園」をめぐる問題に関して“告白会見”を行なった前川喜平・前文部科学事務次官への非難が強まっている。

そんな中、『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、“官房長官に恫喝された官僚”同士として「恫喝の対処法」をアドバイスする!

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加計(かけ)学園が国家戦略特区で獣医学部の新設を認可された一件で、内閣府が文科省に「(認可は)総理のご意向」と伝えたとする文書が存在することを証言した前川喜平前文科事務次官への攻撃が強まっている。

攻撃パターンはふたつ。ひとつは守旧派の逆恨み説の流布だ。文科省は長年、日本獣医師会の利益を守るために新規の獣医学部を作らせなかった。その岩盤規制に安倍政権が穴を開け、加計学園に新設許可を与えた。そこで敗北した前次官が逆恨みし、証言に踏み切ったというものだ。

もうひとつは人格攻撃。前川氏の出会い系バー通いを暴露し、そんな人物の証言は信用できないと印象づける作戦だ。怖いのはこうした人格攻撃を菅義偉(よしひで)官房長官が率先して行なっていることである。

だが、そもそも前川氏は安倍政権を批判していない。国家戦略特区を所管する内閣府によって、「公正公平であるべき行政のあり方がゆがめられた」と言っているにすぎない。ならば、官邸は内閣府と文科省の言い分を精査し、間違っている役所を処分すればよいだけのことだ。

なのに、風俗スキャンダルまで持ち出して前次官の証言を封じようとする。よほど危ないことがあるのだろう。だから、何がなんでも政治権力による恫喝(どうかつ)で抑え込む意思を示しているのだ。

だが、前川氏にひるむ様子はない。その後も爆弾発言は続き、昨年9月に和泉洋人(いずみ・ひろと)首相補佐官から「(早く新設を認めるよう)総理は自分の口から言えないから、私が代わって言う」と伝えられたと追加証言している。

一体、何が前川氏を証言へと駆り立てるのか?

マスコミからの取材依頼はすべて受けること

そもそも文科省は、財務、経産などと比べて霞が関での影響力は強くない官庁だ。そのため、獣医学部の新規認可の手続きで彼らにとっての「正論」を貫こうとしたら、手続き無視で官邸や内閣府に抑え込まれてしまった。そのことへの危機感、反発が証言につながった可能性は十分にある。

また、政権が掲げる「規制緩和」は見せかけで、実は「首相の友達が理事長を務める学校法人への利益誘導だ」という公憤もあったのは確実だ。

ふり返れば私も官僚時代、民主党政権の天下り防止政策を批判し、仙谷由人(せんごく・よしと)官房長官(当時)から「彼(古賀)の将来に傷がつく」と、恫喝されたことがある。そこで同じ体験を持つ同士として、前川氏に「恫喝の対処法」をアドバイスしたい。

まずはマスコミからの取材依頼はすべて受けること。権力の脅しに屈しないためには、とにかくメディアに露出し、自らの主張を広めて国民の支持を集めることが必要だ。

そうしてさらに、文科省の現役官僚の告発を誘う。現役官僚が身を捨てて文書の存在を証言すれば、国民は前川氏を支持し、官邸は追い詰められる。それが安倍一強政治でゆがめられた行政を正すことにつながるはずだ。

菅官房長官にマスコミ同行で会談を申し入れるという手もある。その際、双方のやりとりはマスコミに公開する。権力の脅しに対抗するには、議論をオープンにすることが最も効果的だからだ。

一度証言に踏み切った以上、前川氏はもう引き返せない。ここは覚悟を決めて、加計学園スキャンダルの疑惑解明に尽力してほしい。

●古賀茂明(こが・しげあき)1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。新著は『日本中枢の狂謀』(講談社)。ウェブサイト『Synapse』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中