鈴木宗男・新党大地代表と、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏による対談講演会「東京大地塾」。
前編では、北朝鮮との直接対話に強い意欲を見せるアメリカの狙いと日本への影響について分析したが、後編では北方領土交渉の見通しについて解説する!
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鈴木 5月19日から3日間、国後島(くなしりとう)に行ってまいりました。
実は島を走っている車のほとんどが日本の中古車なんですが、「日本車の修理工場を造ってほしい」という声もありましたし、また「雇用を生み出す環境をつくってもらいたい」との声も多かったです。
島の行政サイド、一般島民の方々も日露共同経済活動について高い関心を示していました。
佐藤 4月27日にモスクワで行なわれた日ロ首脳会談に関する外務省の公式声明が出ましたが、どうやら事態は今後好転していきそうですね。公式声明には具体的な今後の展開として3つの点が挙げられていました。
ひとつ目は航空機を利用した元島民による特別墓参の実現。ふたつ目は、本年8月末の歯舞(はぼまい)群島への墓参の際の追加的な出入域ポイントの設置。
船で墓参に行くと、波が高くて島に上陸できないことすらあるし、特に高齢者の方は長時間船に乗り続けたり、荒れた海上の船から港に飛び移るのは体力的に厳しい。航空機の利用や、墓参の時間短縮につながる出入域の増設は絶対に必要です。
そして3つ目は共同経済活動に関する四島への官民現地調査団の派遣。
鈴木先生もおっしゃっていましたが、国後島の行政と島民から雇用を確保してくれなんて話が出てくるのは初めてですよ。確実に今、北方四島の空気感は変わってきている。その実情を知ることは日本にとっても重要です。
これらの動きはロシアの大きな譲歩によって成り立っているんです。プーチン大統領は来年の大統領選挙を控えた今のタイミングで、日本にとってプラスの決定を下している。国内の支持率低下につながりかねないようなことをしているわけです。
しかし、そうしたリスクを負ってまで、プーチン大統領が動いているのはそれだけ本腰ということ。だから彼の顔を立てるためにも、安倍首相も大きな成果を上げているにもかかわらずあまり大きな声でこれについて言っていないんですよね。外務省は北方領土交渉においてはよくやっていると思いますよ。
(取材・文/小峯隆生 カメラマン/五十嵐和博)
●鈴木宗男(すずき・むねお) 1948年生まれ、北海道出身。新党大地代表。衆議院議員時代から長年北方領土問題の解決のため、日々奔走している。4月30日にはついに公民権が回復。7年ぶりの政界復帰を目指して全国行脚中
●佐藤優(さとう・まさる) 1960年生まれ、東京都出身。外交官時代は、主任分析官として対ロシア外交の最前線で活躍。外務省退職後は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞するなど、作家・評論家として活動中
●「東京大地塾」とは? 毎月1回、衆議院第二議員会館の会議室を使って行なわれる新党大地主催の国政・国際情勢などの分析・講演会。無料で鈴木・佐藤両氏と直接議論を交わすことができるとあって、毎回100人ほどが集まる大盛況ぶりを見せる。次回の開催は6月22日(木)。詳しくは新党大地のホームページへ