「メディアの次の役割は規制改革に消極的な政権の実態を繰り返し報道することではないか?」と語る古賀茂明氏 「メディアの次の役割は規制改革に消極的な政権の実態を繰り返し報道することではないか?」と語る古賀茂明氏

20日、新たな文書の存在が明らかになった「加計学園」の問題。

『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が考える、この問題をウヤムヤにしようとする官邸への反撃の一手とは?

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学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題で、文科省が作成したとされる「総理のご意向」文書。その存否について、安倍政権が再調査する方針を決めた。これまで官邸はこの文書を「怪文書」と決めつけ、「再調査の必要なし」と突っぱねてきた。

それが一転、追加調査する羽目になったのだから、官邸の敗北と言ってもよい。

今回驚いたのは、これまで官僚同様「安倍一強」にすくみ、菅義偉(よしひで)官房長官の言い分を記事として垂れ流すだけだった大手メディアが、その菅氏を会見で追い詰めたことだ。いつも「批判は当たらない」「問題はない」などの決まり文句で政権批判をかわしてきた菅氏が、記者の質問にタジタジとなって、冷静さを装うのに必死になる光景などこれまで見たことがなかった。

今回、大手メディアが踏ん張れたのは、3つの幸運が重なったからだ。それは、(1)前川前次官の告発があったこと。(2)それに続いて、現職の文科省職員がメディアに「総理のご意向文書」が本物と捨て身の証言をしたこと。(3)6月6日の菅長官の会見に記者クラブ外から東京新聞の望月衣塑子(いそこ)記者が参加したことの3点である。

特に、望月氏が21分間で11回も質問して、官邸クラブの「質問はひとり1、2問」という暗黙の了解をぶち壊したことは、他社の記者に勇気を与え、後に複数メディアが追及する突破口を切り開いた。

だが、官邸サイドはそうした事情を十分承知で、実は反攻に自信を持っているようだ。一連の追及が、官邸記者クラブの記者たちの実力によるものではないとわかっているからだ。

その反攻の一手が規制改革である。再調査で文書が本物とわかっても、「総理のご意向」とは「規制改革に不退転の決意で進め」ということであって、「加計学園をえこひいきせよ」というものではないというつもりだ。

官僚や既得権団体の反対を封じ、規制緩和をやれるのは強いリーダーシップを持つ安倍首相だけ。だから、「総理のご意向」と内閣府が口にすることはむしろ当然というわけだ。

首相の「岩盤規制にドリルで穴をあける」はポーズだけ

ただ、安倍政権は規制改革など、ハナからやる気がない。

その証左となるのが、内閣が6月9日に発表した「骨太の方針」である。そこに列挙された規制緩和メニューはいずれも小粒なものばかり。素案の段階で目玉メニューとして注目されていた新発薬と後発薬の価格差を患者負担とする案なども、きれいさっぱり削除された。製薬業界の強い抵抗に遭い、白旗を掲げてしまったからだ。

安倍首相が規制改革に本気ならば、この目玉メニューを外すはずがない。「岩盤規制にドリルで穴をあける」という首相のかけ声はポーズだけ。なんとも情けない話だ。

その一方で、獣医学部の新設を阻む規制にだけはドリルを持ち出す。しかもそれでポッカリとあいた穴から、なぜか首相のお友達の加計学園が顔を出す。そんなバカなことはありえない。

メディアが官房長官にしつこく質問することで、文科省の再調査が実現した。ならば、メディアの次の役割は規制改革に消極的な政権の実態を繰り返し報道することではないか? それで「総理のご意向」=「規制緩和の決意」という図式が成り立たないことを証明できれば、官邸も加計学園問題の安易な幕引きはできなくなるはずだ。

●古賀茂明(こが・しげあき) 1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。新著は『日本中枢の狂謀』(講談社)。ウェブサイト『Synapse』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中