6月15日、ついに成立した「共謀罪」法ーー。犯罪を計画段階から処罰するこの新法について、政府は「テロ対策に必要だ」と連呼し続けた。
プライバシーや表現の自由を制約する可能性があるこの法律。運用する際は、繊細さとか慎重さとかが求められるはずだが…日本の警察や検察って、そんな信頼できる?
■共謀罪の捜査対象はどこまで広がる?
6月15日、安倍政権が「共謀罪」(テロ等準備罪)をついに成立させた。
それも普通の決め方じゃない。委員会採決をすっ飛ばし、いきなり参院本会議で多数決を求める「中間報告」という奇手によって、強引に成立させてしまったのだ。
だが、政府が「テロ犯罪を防ぐための法律」「摘発の対象は組織的犯罪集団だけ」と宣伝したおかげか、共謀罪の成立を危ぶむ声はさほど大きくない。多くの人は共謀罪に問われるのは一部の本当に悪いヤツらで、「オレは対象外」とタカをくくっている。
しかし、その考えは甘いかもしれない。まず、共謀罪が対象とするグループについて、『警察捜査の正体』(講談社現代新書)の著者で、警察OBの原田宏二氏がこう警告する。
「共謀罪の構成要件とされる『組織的犯罪集団』の定義は、極めて抽象的であいまいです。となると、どうなるか? 会社や普通の市民団体などが『組織的犯罪集団』なのか、その認定を現場で捜査にあたる警察がすることになるでしょう。その認定の時期も基準も不明なんです」
つまり、警察の恣意的な判断で共謀罪犯として逮捕される人々が続出しかねないのだ。
また、共謀罪の対象犯罪は277に及ぶ。その中には窃盗などのありふれた犯罪も含まれている。ここで、警察の違法捜査に詳しいジャーナリストの寺澤有氏が証言する。
「2003年に、週プレで(当時)消費者金融最大手の武富士の不祥事を追及する連載をしたときのことです。このスキャンダルで創業者の武井保雄会長が逮捕されることになったのですが、なぜか、不正を告発した元法務課長までもが窃盗罪で逮捕されてしまったんです。内部資料をコピーして外部のジャーナリストに提供した際、会社のコピー用紙を盗んだという容疑でした。内部資料には武富士から警察幹部らに大量の金券が贈られていたことを裏づけるモノもあり、幹部らはこの連載によって免職などの処分に追い込まれました」
寺澤氏は、こういった警察の理不尽さは、ますますヒドいモノになると予想する。
「これからはさらにメチャクチャな逮捕劇が起きるでしょう。共謀罪ができたので、今後は告発者が外部のジャーナリストと内部資料のコピーを持ち出す相談をしただけで、その告発者が『窃盗を共謀した』という容疑で逮捕されてもおかしくない。もちろん、相談したジャーナリストも一緒に逮捕されます」
(取材協力/ボールルーム 西島博之 畠山理仁)