「総理は『平成30年4月開学』とおしりを切っていた」―。
加計学園の獣医学部新設をめぐって、官邸の関与を疑わせる新たな文書が出てきたのは6月20日のこと。
この文書は首相側近とされる萩生田光一(はぎうだ・こういち)官房副長官が文科省高等教育局長に伝えたとされる内容を、担当の専門教育課課長補佐がメモにまとめたもので、文科省の3つの課の職員のおよそ10人が共有していたという。
作成時期は昨年10月21日。国家戦略特区で獣医学部の事業者として加計学園が正式に選ばれる3ヵ月前のことだ。もし、この文書の内容が事実なら、やはり首相は加計学園をえこひいきしていたことになる。
ところが、萩生田氏は同日中に「加計学園に関連して、総理からいかなる指示も受けたことがない」「不正確なものが作成され、意図的に外部に流されたことに強い憤りを感じる」とのコメントを出し、文書の内容を全面否定。疑惑の火消しに大わらわなのだ。
これに対し、文科省関係者の怒りは相当のよう。
「不正確だなんて冗談じゃない! 加計問題で文科省職員が作成したとされるメモやメールに萩生田氏の名前が登場するのは10月7日付の萩生田副長官ご発言概要、11月1日付の行革室宛てメールに続き、これで3度目。“紙屋”と呼ばれる役人の第一の仕事は物事を正確に記録して残すこと。萩生田氏に関する情報が3つの文書すべてにおいて“不正確”なんてことは100%ありえません。文科省の職員をバカにするのもいいかげんにしてほしい」
加計学園疑惑を追うフリージャーナリストもこう言う。
「文書の内容は正確でしょう。萩生田副長官の発言とその後に実際に起きたことが、かなりの部分で一致していることがその証拠です」
実績を吟味しないまま、あちこちからかき集めた教授数
そのひとつとしてこのジャーナリストが指摘するのが、加計学園獣医学部の教員予定数だ。その数は72名。10月7日付文書も、萩生田氏が教員数を「既存大学を上回る教授数(72名)」と発言したとある。
「加計学園のニュースが報道されるようになったのは今年になってからのこと。その段階でも予定教員数は約70名としか公表されていませんでした。なのに、この文書には戦略特区諮問会議が新獣医学部の設置を認めた昨年11月9日より以前に作成されたにもかかわらず、新獣医学部の正確な教員数が記載されている。信憑(しんぴょう)性はかなり高いと考えるべきです」
ただ、この72名の内実はスカスカだ。
「教員数は国内トップとなりますが、老教授と若手ばかりで年齢構成に偏りがあるんです。教授30人のうち65歳が15人。若手も実績のない人材が目立ち、学位のない人が23名もいます。そのなかには現役の大学院生9名が含まれています」
元文科省幹部がこう語る。
「72名という数字をクリアしようと、研究者の実績を吟味しないまま、あちこちからかき集めたんでしょう。この陣容では戦略特区にふさわしい先進的な獣医学教育は無理。現在、大学設置審議会による審査が進められていますが、加計学園は最終的に不認可となる可能性が大です」
事態の収束に躍起になる官邸だが、怒れる文科省からはさらなるリークが出てくる可能性も。もはや獣医学部の新設問題は最初からやり直すべきだろう。