政治家を「人柄」なんかで判断できない

5月中旬、当時の秘書に「このハゲーーーー!!」などと罵声を浴びせ、暴力を振るっていたことを告発された豊田真由子衆議院議員。現在は自民党に離党届を出し、病院で静養中とのこと。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に独自の視点で斬り込む!

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ずいぶん前のことですが、選挙活動中にスタッフを怒鳴りつける候補者を見たことがあります。その直後には、街の人々ににこやかに頭を下げ、熱心に握手して回っていました。当時まだ学生だった私はたまたまその場面を見てしまい、政治家を「人柄」なんかで判断できないな、と思いました。

世論調査でも「人柄が信用できる」なんて回答がありますが、表向きの顔しか見ていないのだから、人柄なんて知りようがないのです。それは人柄ではなくて単なる「印象」。有権者やメディアの前でいかに自分の印象を良く見せるかに長(た)けている人たちが、選挙に勝つのでしょう。

誰も見ていない車内で、弱い立場の秘書をなぶるように罵倒し、脅し、暴力を振るった豊田氏。河村元官房長官は豊田氏が女性だから注目されただけで「あんな男の代議士なんていっぱいいる。あんなもんじゃ済まない」と擁護発言(後に撤回)。麻生財務大臣は「あれ女性ですよ女性、男と書き間違えている」と評しました。

どっちも呆(あき)れた発言です。政界では、そんな「常識」がまかり通っているのでしょうか。豊田氏を発端に、永田町の闇が見えた一件でした。

●小島慶子(こじま・けいこ)タレント、エッセイスト。ある仕事の現場で女性マネジャーが部下を豊田氏さながらの調子で罵倒しているのに遭遇してしまった。そばで耳にしているだけでもつらいのに、当事者の恐怖はいかばかりか