中国・習近平政権のネット検閲がすさまじい。
著作家の劉暁波(りゅう・ぎょうは)氏が7月13日に死去して以来、「WeChat(ウィーチャット)」(中国版LINE)や「微ウエイボー博」(中国版ツイッター)には劉氏を悼(いた)むつぶやき、メッセージがあふれている。中国事情に詳しいルポライターの安田峰俊(みねとし)氏がこう言う。
「劉氏は中国民主化のシンボル的存在。つぶやきを放置して、反体制的な言説が広がるのは少しでも避けたい。そこで習政権はSNSやチャットソフトも含めたネット上の『劉暁波関連語』を次々とNGワード化し、検索・使用できないようにしているんです」
では、どんな言葉がNGワードとされたのか? 安田氏の解説とともに紹介しよう。
●「海葬」 「劉氏の遺骨は海に散骨されました。そのため、中国当局は海葬=劉氏と判断し、NGワードにしたのでしょう」
●「肉まん」+「皇帝就任」 「『肉まん』だけなら問題ないのですが、そこに『皇帝就任』という言葉を加えて検索すると、アクセスできなくなる。実は『肉まん』は習氏のあだ名なんです。習氏が邪魔者の劉氏を葬り、皇帝として独裁体制を強化しようとしている…というような書き込みがあったのでは?」
●「ノーベル賞」 「劉氏はノーベル平和賞を受賞しています」
●「アフラトキシン」 「化学物質の一種で、継続的に摂取すると肝臓がんの誘発要因になるとされています。『中国では政治犯にアフラトキシンが投与される』とフランス国営放送RFIが報道していましたが、このタイミングでわざわざNGワードにするとは……本当に投与していたのかもしれません」
●「RIP」 「『安らかに眠れ』の略語です。劉氏を悼むつぶやきと見なされたのでしょう。ただ、このNGワード化によって『DVD RIP』(無料のDVDコピーソフト)などが検索不可能になった。そのため、中国の“割(わ)れ厨(ちゅう)”(違法にゲームソフトなどを入手し、楽しむ人々)がかなり激怒しているようです(笑)」
まさにしらみ潰し、絨毯(じゅうたん)爆撃。ただ、あらゆる劉氏関連ワードを検閲している習政権にも、ひとつだけ手出しできない言葉があるという。
「それは『劉さん』(中国語表記は『劉大哥』。大哥は男性への親しみを込めた愛称)。中国には劉姓が7千万人もいるんです。しかも、漢民族の英雄である劉邦(りゅうほう)や劉備(りゅうび)、さらには共産党序列5位の劉雲山(りゅう・うんざん)氏の姓でもある。さすがの習政権も『劉』の字はNGにできないでしょう」
今後はネット上で「劉さん」を悼む声がますますあふれる?
(写真/時事通信社)