鉄道好きの石破氏。2009年に東京から鳥取まで寝台列車で移動する際に週プレも同乗し、9時間密着取材を行なったこともある。そのときは政治の話はほぼなかった

安倍政権の支持率急落で、“ポスト安倍”として注目されている石破 茂氏。

「本当に首相になれるのか?」「首相になったら何をするのか?」--来るべき石破政権を完全シミュレーションした!

■昨年から首相になる準備をしていた!

安倍内閣の支持率が急落している。時事通信の世論調査(7~10日実施)では29.9%、ANN(15、16日)では29.2%と、どちらも〝危険水域〟の30%を下回った。これは2012年の第2次安倍内閣発足以来初めてのこと。そこで今“ポスト安倍”は誰なのかが注目されている。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が語る。

「最有力候補は岸田文雄氏と石破茂氏でしょう。岸田氏は安倍政権を支えながら政権を譲ってもらう禅譲(ぜんじょう)なのに対し、石破氏は安倍首相と考え方が違う“対抗馬”」

政治評論家の有馬晴海(ありま・はるみ)氏も、ポスト安倍にこのふたりを挙げた上で、次のように話す。

「しかし、今の安倍首相の人気の落ち方を見ると岸田氏が次の首相になるというのは難しいのではないでしょうか」

となると、次期首相に一番近いのは石破茂氏だ。くしくも週プレ読者291人に聞いたアンケートと同じ結果になった。なぜ石破氏が首相に一番近いのか、前出の鈴木氏が解説する。

「石破氏は昨年の内閣改造時に安倍首相の入閣要請を断って閣外に出ました。そのときから総裁選に出る準備を着々と進めていたからです。ひとつは、自分が首相になったらどんな日本にするかという“政権構想”を本にまとめた。それが4月に出版された『日本列島創生論』(新潮新書)です。テーマは『地方創生』。入閣を断ったときから、この本を書き始めました」

石破氏は、この本に自分の師である故・田中角栄氏の著書『日本列島改造論』を模したタイトルをつけている。それくらい本気になっているということだ。

「次に昨年から時間があればとにかく地方を飛び回っています。そして、自治体関係者や市民団体、自民党の支持者らと膝を突き合わせながらどんな苦労があるのかなどを聞いている。こうした地道な活動で今、地方での支持者は相当な数になっていると思います。

3つ目に閣外に出て反主流派宣言したことで、メディアは自民党内で何か問題が起こると石破氏にコメントを求めるようになった。そしてマスコミへの露出が増え知名度がますます上がり、現在は反安倍の象徴のような存在になっています」(鈴木氏)

石破氏は、来年9月の総裁選に向けて、すでに準備を整えつつあったのだ。そこに安倍首相の支持率が急落し、追い風が吹く。

「自民党内で『安倍首相で次の衆院選を戦ったら負けるかもしれない』という雰囲気が出てくると、『安倍さんと対立構図になっている石破さんでいこう』という流れになっていくはずです」(有馬氏)

石破さんが一番やりたいのは憲法改正

■石破首相は憲法改正と地方創生を目指す!

では、石破氏が首相になると、どんな日本になるのか?

「“地方の活性化”がすべてでしょう。安倍首相は大企業中心の経済政策をとって、大企業が儲かれば、いずれ中小企業や庶民にもその恩恵が降りてきて、地方にも行き渡るという話だったが、庶民にも地方にも行き渡らないまま終わってしまった。石破氏のアプローチは逆です。地方を核にした国づくりを進めていくというものです」(鈴木氏)

「地方にいてもちゃんと食べられる制度を作ろうということです。例えば『うちの地域ならこの特産物が人気商品になる』『この場所は観光の目玉になる』ということをそれぞれの地域で具体的に考えてやっていく」(有馬氏)

憲法改正や安全保障については? 「石破さんが一番やりたいのは憲法改正だと思います」と言うのはジャーナリストの堀潤氏だ。「憲法9条に関しては、第1項も第2項も根本的に書き直したいという立場ですから、石破さんが首相になったら、そこはしっかりと議論してもらいたい」

「石破氏は憲法改正と沖縄問題をセットにして考えている。自分たちの国は自分たちで守るのだから、アメリカは沖縄から出ていってくれと。日米安保の見直しです。そして、自衛隊がしっかり日本を守るのだから自衛隊をきちんと認めよう。そのために憲法改正をしなければいけないという考え方ですね」(鈴木氏)

安倍首相の支持率が下がり、一気にポスト安倍として注目されている石破氏だが、そう簡単に首相になることができるのだろうか。

「12年の総裁選では5人が立候補し、石破氏が1位で安倍氏が2位だった。しかし、過半数に届かなかったので安倍と石破で決選投票をしたら安倍が勝った。決選投票は国会議員だけの投票。石破氏は地方では圧倒的に強いが国会議員には人気がなかったんです。その状況は今でも変わっていません。石破派は19人しかいませんから。そこで国会議員票を広げるためにほかの派閥との連携の動きがあります。例えば額賀(ぬかが)派(55人)は今、総裁候補がいない。そこで石破派と組もうという話が出ている。石破首相の可能性は、ほかの派閥との連携がどれくらい進むかにかかっているでしょうね」(鈴木氏)

「僕は小池百合子都知事次第だと思います。小池さんと石破さんは仲がいい。かつて総裁選を共に闘ったほどの戦友。都民ファーストの会の国政政党ができて、安倍政権が今の支持率の低迷を打開できないと勢力図が変わってきます。自民、公明、都ファの連立政権になったときには石破さんでこの難局を切り抜けようということになるかもしれません」(堀氏)

今後、自民党は誰をリーダーにして衆院選を戦うのか。「安倍 vs 石破戦争」がひそかに行なわれている。

(取材・文/村上隆保 取材協力/畠山理仁 撮影/本田雄士)

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