10日に公示された衆院選で、「希望の党」と新党「立憲民進党」、さらに無所属と事実上、分裂することとなった民進党。
そんな中、枝野幸男代表代行が立ち上げた「立憲民主党」に対し、『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、「改革を打ち出すべき」とアドバイスする。
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『週刊プレイボーイ』41号のコラムで、民進党は解党に踏み切り、保守系、リベラル系に分かれるべきだと主張した。民進党の最大の弱点は両者が混在して意見がまとまらず、何をやりたい政党なのか、よくわからないことだった。
そこで、保守タカ派新党とリベラル平和主義新党に分党・純化して出直せとアドバイスしたのだ。特に安倍自民との差別化を明確にできるリベラル新党は政権批判の受け皿として、躍進する可能性が小さくない。ただ、その時点ではこうした民進党の純化作業は実行に移せるとしても、最低数ヵ月の時間がかかると考えていた。
ところが、9月25日の小池百合子都知事による「希望の党」の結党宣言をきっかけに、前原誠司民進党代表による希望の党合流宣言→小池知事の「全員は受け入れない」発言→枝野幸男代表代行によるリベラル新党「立憲民主党」結党と、わずか数日間で民進党の解党、そして純化の動きが表面化した。
実は、2週間前のコラムの最終校了時に小池氏側近から前原氏が小池氏と新党を作る決断をしたと聞いた。しかし、半信半疑のまま原稿を直すことはしなかった。不明を恥じるばかりだ。
いずれにせよ、このコラムで民進党は解党せよと説いた責任が私にはある。というわけで、立憲民主党に次なるアドバイスを送りたい。
希望の党の結党をめぐり、気になった小池知事の言い回しがある。それは「希望の党は改革保守政党を目指す」というセリフだ。私も今の日本には改革が必要だと考えている。
だが、その後の動きを見ていると、いつの間にか「改革」の二文字が消えている。小池知事やその周辺から飛び出る言葉は「排除」をキーワードとした保守系議員、リベラル系議員の選別ばかりだ。
保守、リベラルの2項対立の論議に集中しないこと
それはマスコミや世論も同じ。改革という視点はすっぽりと抜け落ち、政界が安倍自民、小池希望の2大右派政党、そしてそこからはじかれたリベラル新党(立憲民主党)という3つのグループに再編される状況にのみ関心を寄せている。
そこで立憲民主党に提案したい。くれぐれも保守、リベラルの2項対立の論議に集中しないことである。それに終始していては安倍自民、小池希望から「共産党と同じ左翼」というレッテル貼りをされ、支持層が狭まるだけ。
小池知事が仕掛ける保守・リベラル選別の“踏み絵バトル”の罠(わな)にはまらないためにも、リベラル的主張だけでなく「改革」のメニューを高く掲げるべきだ。そうすれば、改革を求める無党派層を取り込むことができる。
幸い、安倍自民と小池希望は改革を口にするだけで、本気度はほぼゼロ。だからこそ、立憲民主党は護憲、平和主義と並ぶ差別化の一丁目一番地として改革を打ち出すべきなのだ。
その具体的メニューとして企業団体献金の全面禁止、国会議員の文書通信交通滞在費の使途を含めた領収書全面ネット公開、プライマリーバランス回復までの官僚の給与カット、金融所得分離課税の廃止、ガソリン車、ディーゼル車の39年(英仏より早い)までの販売禁止、北朝鮮の核ミサイル問題解決までの全原発稼働中止などはどうだろう。
こうした改革メニューを打ち出せば、立憲民主党が予想以上の当選者を出すことは十分可能なはずだ。
●古賀茂明(こが・しげあき) 1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。新著は『日本中枢の狂謀』(講談社)。ウェブサイト『Synapse』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中