「支持政党なし」の佐野代表は、この名前で行なった選挙活動を「大まじめだ」と語る。確かに悪意は見えない

10月22日投開票の今回の衆院選で、議席は獲得できなかったものの、注目を集めた勢力がある。比例東京ブロックに4人の候補を擁立した政治団体「支持政党なし(略称:支持なし)」だ。同団体は12万5019票を獲得。その数は議席を持つ「社会民主党」や「日本のこころ」の2倍以上である。

しかし、一部からはこんな批判の声も上がっている。

「選挙公報には候補者の名前も顔写真もなく、『支持政党のない方は【支持なし】とお書きください』とだけ。横に小さく『比例代表は』とありますが、これを選挙の公的なガイダンスだと勘違いした人もいるのでは?」(30代男性)

有権者を罠にハメたのか? 「支持なし」の佐野秀光(ひでみつ)代表に直撃した。同団体の本部は、佐野氏が経営する会社の自社ビル(東京都大田区)内にあり、入り口には「支持政党なし」の看板やのぼりが立つ。「日本維新の会(19万8127票)より票を取れるかな、と思っていたので、少し残念です」(佐野代表、以下同)

さっそく核心に迫ろう。「支持なし」は固有名詞なのか一般名詞なのか、わかりにくい。これは“ズル”では?

「その批判は正しくないと思います。まず、わざわざ投票所まで足を運ぶ人たちが『支持なし』を記入方法だと間違えるでしょうか? そもそも、間違い票を狙うなら、(選挙期間中)一日に15ヵ所以上も街頭演説なんてしませんよ。私たちの考えがマスコミに報道されないから、一部が『ズルだ』と言っているのです」

その“考え”とは?

「実現できない公約を並べる無責任な政党が多いですが、私たちは議席を取らなくても公約は果たした。それは、『今の政治家にダメ出しをするため、支持政党がない人の数を示す』というものです」

ところで、「支持なし」は2014年衆院選(比例北海道ブロック2名)、16年参院選(比例区2名、選挙区8名)に続いて今回が3回目の選挙となった。しかし、これまでひとりも当選していない。相当な出費なのでは…?

「供託金だけでも、1回目は1200万円、2回目は3600万円、今回は2400万円かかりました。残念ながら、すべて没収されましたね。私は不動産登記情報を法務局より安く提供する会社を営んでいます。年商は36億円。ただ、政治活動に会社の金は使えないので、自分の役員報酬を選挙費用に回しています」

そこまで身銭を切って何がしたいのか?

「直接民主制の実現です。私たちが議席を獲得できたなら、すべての法案についてネット上で意見を募り、その結果に忠実に従って国会での議決権を行使します。これを実現するため、次の国政選挙も議席獲得を目指します!」

次は2年後の参院選。「支持なし」は支持を得られるか。

(取材・文・撮影/畠山理仁)