新刊を記念してトークライブするモーリー・ロバートソン氏とプチ鹿島氏

各メディアに引っ張りだこの国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソン氏が、右からでも左からでもなく「ニュースを立体視する知性」を詰め込んだ最新刊『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』

その発売を記念して、TVやラジオでお馴染みな切れ味抜群の時事芸人・プチ鹿島氏をゲストに招き、新宿・歌舞伎町の「週プレ酒場」で行なわれたトークライブの模様をお送りします。前回記事に続き、異様にかみ合うふたりのマシンガン時事放談、後編!

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鹿島 それとアメリカの話で、この本の前半で書いてましたけど、グローバリズムがどんどん進んでいった結果、多くの白人たちは自分たちが幸せだと思っていた価値がすべて失われていると。それで今、白人が拠り所にしているのは根拠のない自信だと。

モーリー そう。俺たちは白人だから、という。

鹿島 それって日本でも起きていますよね。ホントに合わせ鏡というか。

モーリー 日本人でよかった的なね。メディアでも最近、「日本を褒める外国人」の枠がどんどん広がってます(笑)。一番の問題は、今もって自分の老後は安泰だとか、このまま移民を受け入れなくてもなんとかやっていけるとか、そういう変化を拒み続ける姿勢。頑張っているんだから、これだけやっているんだから、いつか報われるはずだ、と。でもこれ、80年代の共和党支持者と同じなんですよ。

鹿島 そうなんですか!

モーリー 今までのルールを破らず頑張れば、成功の女神は微笑んでくれる。

鹿島 それが30年遅れで…。

モーリー 実際はリーマンショックあたりから、そんな夢は全くなくて。だったら変化を拒むんじゃなくて、希望をもたらしてくれる変化を求めるしかないでしょう。

例えば、男女関係を見直す。自民党のオヤジ的な部分、構造的ミソジニーは批判しないと。安倍政権は女性を活躍させて、さらに子育てしやすい社会にして、子どもを産めと言っているんだけど、それを言うなら移民でしょと。なんでかっていうと、女性が家事も育児も仕事も、そして今後は介護もこなさなきゃならないってことは、家政婦さんが必要だから。

アメリカでは実際、外国から移民してきた家政婦さんが女性の社会進出を手助けしたという“不都合な事実”があるわけです。男性が女性と同等に家事・育児に参加することと並行しなきゃ、女性の進出は成り立たないし、でなきゃそりゃ安く雇える家政婦さんが必要ですよ。

そのオプションを最初から放棄して、日本は島国だから移民は合わないとか、AIがやってくれるとか。そういう「寝言は寝て言え」的なことを自民党は言い続けるわけ。シングルマザーにしても、日本では離婚したことが悪いことで、そういう人が貧乏になるのは仕方ないという空気がなんとなくある。そうじゃなくて、母がいて、子がいて、それをみんなで祝福して、みんなで支えて大学まで行かせましょうと。

鹿島 逆にいえば、この本にも書いてましたけど、もし自民党が先んじて移民政策に舵を切れば、その時はまさに野党とかリベラルの立場はなくなるんじゃないかと。

モーリー 消滅ですよね。建前ばかり言う、ちょっと困った人たちになっちゃう。

サザエさんも毒っ気のある時事ネタをやっていた

鹿島 あともうひとつ、本の中で興味深かったのは、40年以上前のアメリカのホームドラマの話。

モーリー 『オール・イン・ザ・ファミリー』ですね。超保守的な港湾労働者のオヤジと、リベラルな娘夫婦との価値観の衝突を描いたコメディ。娘婿は反戦運動でヒッピーで、会社をやめて大学院に戻って、社会学か何かを勉強してる。それを自分の娘が働いて、経済的に支えて。彼は理想に走り、それをオヤジが「このバカめ」って腐す。

鹿島 オヤジは勉強とかはわかってないけど、とにかく現実の社会は知っていると。

モーリー そう。60年代の反戦運動の熱狂を冷静に振り返るような作りになっていました。「理想を叫ぶだけでは現実は変えられない」という若者の悩みに答えるような。

確か放送開始から3回目か4回目だったと思うんですが、父親が「おまえの理想じゃ世の中は変わらない。オレが(当時の)ニクソン大統領に手紙を書いてやる」と、本当に手紙を出すという回があったんです。後日、みんなでTVを観ていると、大統領がその不自然な文章の手紙を全国民に向けて読み上げちゃう。それでオヤジがドヤ顔する、というストーリー。

鹿島 理想を追い求めるのもいいけど、実際に大統領に手紙を読ませたのは、字を書くことも覚束ないオヤジだった。

モーリー もしかしたら大統領は共和党支持者に対するおべっかとして手紙を読んだだけなのかもしれないけど、それでもやっぱり実際に動くのか、それとも理想を語るだけなのかというのは、運転席に座るか助手席に座るか、くらい違う。単にキレイ事を言い続ける人は、舞台を観て客席からやじを飛ばしているだけの人になってしまう。

鹿島 あのホームコメディの話を読んで直感的に思ったのは、『サザエさん』でも似たようなことができるんじゃないかって。元々、サザエさんって新聞の4コマ漫画ですから、昔の作品を読むと社会風刺とか、毒っ気のある時事ネタをやってたんですよね。

TVを毛嫌いしている時期があったけど…

モーリー 今朝の朝日新聞に昔のサザエさんの復刻版が載っていて。救世軍が「社会鍋」でお金を集めているんだけど、そこでラッパを吹いているところに犬が来るのね。その時は「おまえにあげられるものはここにはない」と追い返すんだけど、最後にラッパ吹きは、そのお金でお店に行ってパンを買って犬に与えるんですよ。それを読んで胸を締め付けられるような気持ちになりました。サザエさんはホントに素晴らしい。

鹿島 そうですよね。だからアニメも大転換すれば、そういう役割ができると思う。

モーリー 現代版の『ラディカル・リベラル・サザエさん』は、例えば覚せい剤中毒患者となったカツオの再スタートを描くとか。絶対面白いと思います。みんな泣きながら見ると思う。

鹿島 飛ばすなあ~。でも、スポンサーが高須院長ならそれくらい許してくれるかもしれない(笑)。

モーリー 実は、僕もTVを毛嫌いしている時期があったんだけど、実際に出てみると、アイドルにしろ芸人さんにしろ、すごいわけ。とてもマネできない。どういう筋肉を使ってるのかわからない。そこにしっかり敬意を払いつつ、自分も表舞台に立って、レトロウイルスみたいに浸透していくほうが、急がば回れでやっぱり早いと思うようになりました。

鹿島 中から変えていく。それってまさにアメリカのリベラルと同じですよね。急激な革命を起こすのではなく、内側から徐々に。

モーリー 社会に寄り添って、働いている人たちの気持ちや愛国心も肯定しつつね。愛国心がダメだ、日の丸や君が代も嫌いだ、という気持ちもわかるんだけど、それが先にきちゃうと普通の人はついていかない。そうじゃなくて「日本を愛するならLGBTとか難民とか、そういう人たちのことを考えるという愛国心もあるよね」というのが建設的なリベラルです。

日本社会って発想が固まっちゃう部分があるけど、実はいろいろなソリューションがある。それがあるとわかっただけで、ずいぶん風通しがよくなると思うんです。

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モーリー・ロバートソン国際ジャーナリスト、ミュージシャン。日米双方の教育を受けて育ち、米ハーバード大学で電子音楽を専攻。『スッキリ』(日テレ系)、『みんなのニュース 報道ランナー』(関テレ)、『正義のミカタ』(ABC)などレギュラー・準レギュラー出演多数。

プチ鹿島時事ネタと“見立て”が得意。オフィス北野所属。『荒川強啓デイ・キャッチ!』(TBSラジオ)、『火曜キックス』(YBSラジオ)ほかメディア出演、コラム執筆多数。著書に『芸人式新聞の読み方』(幻冬舎)、『教養としてのプロレス』(双葉文庫)など。