鈴木宗男氏(左)と佐藤優氏が衆院選後の政局について語る!

鈴木宗男・新党大地代表と、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏による対談講演会「東京大地塾」

今回は自民党の圧勝に終わった衆院選後の政局、そして安倍首相との密接な関係を示したトランプ大統領の訪日とその後の韓国、ロシア訪問について分析する!

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鈴木 今回は8月以来の開催となります。10月22日に衆議院総選挙の投開票が行なわれました。私は残念ながら当選とはなりませんでしたが、娘の貴子は自民党の若手として出馬し、おかげさまで3回目の当選を果たしました。私も生涯政治家として、これからも政治活動をひたむきに続けていきたいと思っています。

さて、まずはその衆院選後の政局にまつわる分析から、佐藤さんにお願いしたいと思います。

佐藤 わかりました。正直なところ、今の政局は世の中が思うほど安定していないと思っています。国会議員の7割5分ほどが、かなり右寄りの考えを持っているという状況ですが、そのような政治情勢において、昨今話題になっているようなスキャンダルや暴言の類いは、政局を大きく揺るがす要因になりかねません。

加えて、安倍総理の支持率と、自民党の獲得議席数から見た支持率にも乖離(かいり)がありすぎる。このことは、党内政局を引き起こす可能性を含んでいます。よほどのことがない限り、来年の総裁選では安倍さんが再選されるわけですが、統一地方選、参院選などに向けて不安が募ります。

鈴木 希望の党を立ち上げた小池百合子さんは、11月14日に代表を辞任されましたね。

佐藤 小池さんは都政で得た影響力を国政に持ち出そうと若狭勝さんをそばに置きましたが、これがあまりにダメな人選だった。そもそも、検察官は体質的に一番政治家に向いていない。マニュアルでルーティンワークをこなし、一日の大半を犯罪の話題に費やさざるをえない上、公権力を背景に自分の意思を通すから、上から目線になりがちな人が多い。それでは有権者の気持ちはわかりませんよ。

小池さんは今後も諦めずに「私が総理大臣になる時は必ず来る」と狙っていると思います。あとは、いつどういう形で出てくるか。彼女は完全なるポピュリストではないので、都政を投げて国政に来ることはできなかった。とはいえ、「次の次」を狙うという考えは表明すべきではない。政治の世界は先々があてにならなくて当たり前なんですから。

アメリカ最大の成果は“武器を売りつけたこと”

鈴木 11月初旬には、トランプ大統領が来日しました。そのことに関する佐藤さんの分析をお願いします。

佐藤 今回の訪日でアメリカが得た最大の成果は、“武器を売りつけたこと”です。ここからは私の臆測になるけど、トランプは今回、安倍首相にふたつの選択肢を出したと思うんです。ひとつ目は、対日貿易赤字を解消するために、両国の貿易の項目ひとつひとつに複雑な協議を散々重ね、最終的にはアメリカが勝つ、というシナリオ。もうひとつは、日本に言い値でアメリカの兵器を購入させ、自国に資金を流入させるというシナリオ。

そして日本は後者を選択した。兵器というのは値段があってないようなものですからね。地雷ひとつにしたって、同じ地雷が500円でも5万円でも売っている。そして、技術更新の案内があれば、また新しい兵器を言い値で買わされる可能性が高い。日本の財務省は、このやり方で本当にいいのかもう少し精査したほうがいいと思いますね。

加えて、フランスやイスラエルからも兵器は購入する姿勢を示したほうがいい。だって、相見積もりを取るということは、言い値で買わされないようにするための鉄則じゃないですか。そういった取り組みもしながら、本当に日本の防衛力評価に必要な分だけ買うのならいいと思うのですが。

★後編⇒鈴木宗男×佐藤優が分析するトランプ大統領のアジア歴訪「八方美人外交に踊らされるな!」

(撮影/五十嵐和博)

●鈴木宗男(すずき・むねお)1948年生まれ、北海道出身。新党大地代表。衆議院議員時代から長年北方領土問題の解決のため、日々奔走している。今年、公民権が7年ぶりに回復し、衆院選に出馬。衆議院議員の鈴木貴子は長女

●佐藤優(さとう・まさる)1960年生まれ、東京都出身。外交官時代は、主任分析官として対ロシア外交の最前線で活躍。外務省退職後は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞するなど、作家・評論家として精力的に活動中

■「東京大地塾」とは?毎月1回、衆議院第二議員会館の会議室で行なわれる新党大地主催による国政・国際情勢などに関する分析・講演会。参加費無料で鈴木・佐藤両氏と直接議論を交わすことができるとあって、毎回100人前後の聴衆が集まる大盛況ぶりを見せる。次回は、12月21日(木)14時?。詳しくは新党大地の公式ホームページへ