「安倍一強政治の長期化で、霞が関では政権への忖度が日常の風景となっている」と指摘する古賀茂明氏 「安倍一強政治の長期化で、霞が関では政権への忖度が日常の風景となっている」と指摘する古賀茂明氏

東京地検特捜部が強制捜査に入った、リニア不正受注事件とスパコン詐欺事件。

『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、ふたつの事件にはどちらも“アベ友”が関わっていると指摘する。

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東京地検特捜部の動きが気にかかっている。

スパコンベンチャーの「ぺジーコンピューティング」(以下、ペジー社)の社長らを詐欺容疑で逮捕したのに続き、JR東海が発注したリニア中央新幹線の関連工事で入札不正があったとして、大手ゼネコンの「大林組」に強制捜査のメスを入れたのだ。

ふたつの事件に共通するのは、どちらも安倍政権に近い人物が登場するということ。

まずペジー社。逮捕された齊藤元章社長は伊藤詩織さんへの準強姦疑惑で告発されたジャーナリストの山口敬之氏と親しかった。山口氏をペジー社の顧問に迎えて報酬を支払い、「ザ・キャピトルホテル東急」の一室も無料で提供していたというから、かなり深い関係だったのだろう。

その山口氏は詩織さん準強姦事件で逮捕状まで出ていたのに、菅官房長官の元秘書官で当時、警視庁刑事部長だった中村格(いたる)氏が、寸前で執行を止めたことに、疑惑の目が向けられている。山口氏は安倍総理から独占取材を許され、『総理』(幻冬舎)というタイトルのヨイショ本を書いていることもあって、メディア界ではいわくつきの“アベ友”と目されているのだ。

山口氏は麻生副総理とも昵懇(じっこん)の仲とされている。その関係からペジー社に格別の好意を抱いたのか、麻生副総理は今年5月25日の参院財政金融委員会で、「ペジーコンピューターというものが出てきました」と答弁し、ペジー社の大宣伝をぶち上げてしまったほどだ。

注目すべきは、ペジー社は助成金詐欺の舞台となった経産省傘下のNEDOからだけでなく、文科省管轄の科学技術振興機構からも最大50億円の貸し付けを受ける予定だったことだ。また、ペジー社のスパコンを積極的に購入しているのも理化学研究所、海洋研究開発機構、高エネルギー加速器研究機構といった文科省の関連機関だ。

麻生副総理は文教族として知られる。彼とペジー社の親密さを知るだけに、こうした文科省の関連ファミリーが“忖度(そんたく)”をして、融資決定やスパコン購入に動いたと勘繰られてもおかしくない。

大林組の疑惑にも、やはり“アベ友”が登場する

そして大林組の疑惑にも、やはり“アベ友”が登場する。リニア工事を発注したJR東海のトップ、葛西敬之名誉会長だ。葛西氏は安倍総理の財界応援団長として知られ、総理とはしばしばゴルフや食事をする仲だ。

リニア新幹線の総工事費は9兆円超。当初、JR東海はこの費用を自力調達すると豪語していたが、なぜか途中から、政府の財政投融資3兆円を借り入れるというスキームに変わってしまった。

今回の談合事件では、JR東海側が入札情報を大林組に漏洩(ろうえい)した疑いまで出てきた。単に談合に巻き込まれたのではなく、談合の共謀者ということになってくる。さらに、東京地検の捜査でリニア工事が遅延すれば経費増で赤字ともなりかねない。葛西名誉会長にすれば、この捜査は不満なはずだ。

安倍一強政治の長期化で、霞が関では政権への忖度が日常の風景となっている。そんなムードに立ち向かうかのごとく、有力な“アベ友”が登場するふたつの疑惑捜査に乗り出した東京地検特捜部。これが、霞が関にはびこる悪しき忖度ムード一掃のきっかけになればよいのだがーー。

●古賀茂明(こが・しげあき) 1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。新著は『日本中枢の狂謀』(講談社)。ウェブサイト『Synapse』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中

今週、東京地検特捜部が強制捜査に入った、リニア不正受注事件とスパコン詐欺事件。

『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、ふたつの事件にはどちらも“アベ友”がからんでいると指摘する。