攻撃の先陣を切るのは、護衛なしで単独侵入できるステルス爆撃機B-2。現在グアムに9機が集結。

結局のところ、アメリカは北朝鮮攻撃を「やる」のか、「やらない」のかーー。核ミサイル危機が深刻化した昨年以来、ずっと取り沙汰されている議題だ。

最後はトランプ大統領の決断ひとつである以上、「やるかもしれないし、やらないかもしれない」と言うしかない。ただ、最近はあまり緊張感を感じないし、何より今は韓国で五輪が行なわれている。当分は「ない」だろうーーそう思う人も多いのではないか。

ところが、実はここ最近、米軍の様子がおかしい。あらゆる状況証拠が「戦争近し」の警告を発しているとしか思えないのだ…!

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米海軍戦略アドバイザーの北村淳氏は、アメリカの現状をこう説明する。

「最近、米軍が準備を進めているのは『予防戦争』―つまり、米本土への核攻撃を事前に阻止すべく、北朝鮮の核兵器能力を無力化する戦争です。もちろんそこには奇襲爆撃から始まる地上侵攻も含まれます」

しかし、トランプ大統領は以前“レッドライン”の存在に言及しておきながら、それを明らかに越えてICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験を行なった北朝鮮に対し、まだ手を出していない。これはなぜなのか?

「非常にシンプルな話ですが、米軍の準備がまだできていなかったということ。具体的に言えば、爆撃機と艦艇、それに大型爆弾です。それさえ整えば、できる限り早く実行したい。北のICBMの数が増え、多弾頭や囮(おとり)弾頭まで搭載されてしまえば、米本土への核攻撃が『予防』できなくなりますから」

そして、ここ最近の米軍のさまざまな動きを見ていると、どう考えても戦争に近づいているとしか思えない雰囲気があるという。まずは空軍から列挙してみよう。

●1月8日、グアム島アンダーセン基地にB-2ステルス戦略爆撃機3機が200人の要員と共に展開。現在、米軍が保有する全20機のうち9機がグアムに集まっている。

●1月16日、同基地にB-52H爆撃機6機が300名の要員と共に展開。

言うまでもなく、これらの爆撃機は北朝鮮攻撃の際は主力となる。続いて陸軍の動きも見てみよう。

米軍の準備は着々と整いつつある

●昨年12月、ノースカロライナ州で48機の攻撃ヘリと輸送ヘリが、実弾砲撃の下、陸軍部隊と大型兵器資材を移動する訓練を実施。

●同月、ネバタ州で陸軍第82空挺師団の精鋭100名が夜間降下侵攻訓練を実施。

やはり、いずれも北朝鮮への侵攻を念頭に置いた訓練であることは明らかだ。

また今年1月には、米陸軍が平昌五輪期間中に韓国に駐屯する特殊部隊の大幅増強を予定していることも明らかになった。さらには、米本土で陸軍予備役1千名が参加する緊急時の動員訓練もすでに行なわれている…。

フォトジャーナリストの柿谷哲也(かきたに・てつや)氏はこう語る。

「予備役はイラク戦争、アフガニスタンにおける対テロ戦争でも動員されました。今度の“第2次朝鮮戦争”でも、作戦が長期化すればそうなるかもしれない…との予測があってのことかもしれません」

こうして、米軍の準備は着々と整いつつあるのだ。

◆本日2月10日発売の『週刊プレイボーイ』9号「米軍『北朝鮮壊滅作戦』の全貌」では、予防戦争の作戦内容や空爆だけではない地上作戦のポイントなどを詳説。そちらもお読みください。

(取材・文/小峯隆生 写真/U.S.AirForce)