国家主席の任期を撤廃し、「習近平思想」を書き加える改憲案を提出。マジで毛沢東以来の独裁者誕生間近だ。

着々と権力基盤を固めてきた中国・習近平(しゅう・きんぺい)国家主席が、ついに毛沢東(もうたくとう)以来の“終身皇帝”へ―。

2月25日、中国共産党中央委員会は国家主席の任期(2期10年)を憲法条文から削除する改正案を発表。これで習主席は死ぬまで国家指導者の座にい続けることもでき、“一強時代”が長期化する可能性が高まったのだ。

日本にも今後、さまざまな影響が出てくるはずだが、特に戦々恐々としているのが、中国で取材活動を行なうジャーナリストたちだ。多数の中国関連著書があるルポライターの安田峰俊(みねとし)氏はこう語る。

「習体制になった13年以降、政権に批判的な言論や活動に対する弾圧は明らかにえげつなさを増しています。胡錦濤(こきんとう)時代は、弾圧対象は基本的に中国国内の中国人が多かったのですが、習体制下では国外にいる中国人、あるいは外国籍を取った“元中国人”にまで広がっている。そして、日本でも一部報じられたとおり、すでに中国国内で日本人が拘束されたり行方不明になったりするケースも出ています。

それでも習政権があと5年で終わるなら、まだ『危険水域はこの範囲までかな』という予測が立ちますが、“終身独裁”となればさらにやりたい放題になるのは目に見えています。また、彼らにとって最もうっとうしいのはメディアやジャーナリスト。今や中国では監視カメラや顔認証システムといったデジタル監視網が広がっていて行動は筒抜けですし、スパイ容疑であれなんであれ、罪状はなんとでもでっち上げられますから」

実際、別のある日本人ジャーナリストは最近、以前より明らかに入国審査の時間が長くなり、マークの厳しさと身の危険を感じているという。

昨春、大連の公園から中国人民解放軍の新型空母を撮影中、現地警察に一時拘束(数時間後に釈放)されたフォトジャーナリストの柿谷哲也(かきたに・てつや)氏もこう語る。

「習体制下で反スパイ法が施行されて以来、北京や上海ではスパイを通報した市民に報奨金が出るとされています。これが全国的に広がっているかどうか定かではありませんが、私が珠海市で雇った通訳の中国人も『通報内容をもとにスパイ事件を防いだ場合は破格の報奨金が出る』と話していた。おそらく私のケースも現地で市民が通報したのでしょう。こうなると、スマホで写真を撮る外国人観光客まで通報・拘束の対象となる可能性はかなり高いですね。

また、宿泊施設も状況が悪化しています。以前は比較的、検索やサイト閲覧の自由度が高かった欧米資本のホテルのインターネット回線でさえ、最近は見られないサイトが増え、検閲や監視の手が伸びているのを感じます」

前出の安田氏は、中国での取材活動の今後をこう嘆く。

「もはや政治など敏感な分野の取材は、テレビや新聞など大手メディア企業の社員ジャーナリストにしか取材できなくなるでしょう。さすがに中国当局も彼らを直接、拉致や長期拘束するリスクは大きいですから。もちろん彼らにも今まで以上の圧力はかかるでしょうが、『あなたたちが最後の希望だから頑張ってくれ』と言うしかありません」

恐るべし、習独裁政権…。

(写真/共同通信社)