会場の「インテックス大阪」は築33年。飲食スペースのテーブルは汚れが目立ち、ガムテープで補強されていた。 会場の「インテックス大阪」は築33年。飲食スペースのテーブルは汚れが目立ち、ガムテープで補強されていた。

来年、初めて日本で開かれるG20(主要20ヵ国・地域)首脳会議の開催地が大阪に決まった。誘致は愛知県、福岡市なども名乗りを上げていたため、さぞかし大阪は死に物狂いの運動を繰り広げたのだろうと思いきや…。

「とんでもない。G20にふさわしい国際会議場がないこともあって、大阪府は当初、立候補するつもりさえなかったようです」(全国紙・大阪府政担当記者)

事実、下馬評では「国際会議の開催実績が大阪より上で、かつ誘致に力を入れていた麻生(あそう)太郎副総理の地元・福岡が有力」(自民党関係者)という声もあり、決定発表の数日前には朝日新聞が「政府が福岡開催で最終調整に入った」と報じたほどだった。

ところがフタを開けてみれば、選ばれたのは大阪。表向きの理由は「福岡は宿泊施設不足」とされているが、そんなことはずっと前からわかっていたはずだ。いったいなぜ“大逆転”が起きたのか?

「どうやら安倍官邸が福岡決定の流れをひっくり返したようです。そもそも大阪の立候補自体、官邸筋から松井一郎府知事へ『なぜ立候補しない?』と強い要請があったそうで、府庁側は『えっ、めぼしい国際会議場がないけど、いいの?』と、おずおずと立候補に踏み切ったと聞きます」(前出・府政担当記者)

官邸の狙いを共産党の宮原威(たけし)府議はこう説明する。

「安倍首相は維新に恩を売りたいんです。維新は野党とはいえ、前のめりなほど自民に協力的。首相は今国会の目玉とされる『働き方改革』関連法案を成立させ、さらに悲願の憲法改正をやり遂げるため、G20開催を“土産”として維新に差し出したのでしょう。また同時に、今秋の総裁選へ向けた大阪の自民党員に対するアピールもあったと思います。2012年の総裁選では、大阪の党員票数で石破茂(いしば・しげる)氏に負けていましたから」

政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏もこう言う。

「大阪開催決定のキーマンは間違いなく菅義偉(すが・よしひで)官房長官です。菅さんは自民が下野していた時代から月イチのペースで大阪に通い詰め、橋下徹(はしもと・とおる)前大阪市長や松井知事との蜜月関係を築いた。改憲の発議を与党だけでやると独善的との批判が出て、その後の国民投票にも悪影響が及びかねない。“改憲に賛成する野党”の役回りを維新に期待して、大阪にG20開催権を与える配慮をしたとみています」

開催決定の数日前には、定例会見で「G20? 大阪は厳しい」と諦めモードだった松井知事。それが安倍-菅ラインの“忖度(そんたく)”で大逆転となったはいいが、会場となる「インテックス大阪」は築33年で一部に和式トイレも残るという、かなり年季の入った施設。ホンマに大丈夫でっか?

(取材・文/ボールルーム)