「地域の関係者が出資額の過半を占めるプロジェクトに限って国が支援するという原則が必要」と指摘する古賀茂明 「地域の関係者が出資額の過半を占めるプロジェクトに限って国が支援するという原則が必要」と指摘する古賀茂明

全国各地で行なわれている地方創生のプロジェクト。

その中で、『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、以前から注目している北海道下川町の取り組みを紹介する。

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環境保護や貧困撲滅などの目標を掲げる国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」に、官民から注目が集まっている。首相官邸は昨年に「SDGs推進本部」を設置。政府は、2020年の東京五輪でのアピールを狙って、国内のSDGsへの取り組みを強化するために「ジャパンSDGsアワード」を設けた。

その第1回表彰式(昨年12月)で、内閣総理大臣賞を受賞したのが、北海道北東部に位置する人口わずか約3300人の下川町だった。

その特徴は町の9割を占める森林を生かしたコミュニティづくり。町営林を毎年全体の60分の1に当たる50haずつ伐採し、植林→育成→伐採を60年周期で繰り返す。木材生産に限らず間伐材利用で土木資材、水質改良剤、レジャー用燃料、化粧品などを開発・販売し、その売り上げで町民の暮らしを支えるのだ。

私は、13年以来何度も現地を視察している。特に感心したのは、町ぐるみで取り組むバイオマスを使った熱電併給システムだった。端材から作った木質ペレットを加熱、そこから発生した可燃性ガスをさらにボイラーで燃やし、地域に電気だけでなく、温水で熱も併せて供給する。

町全体の年間エネルギー費用は電力5.2億円、ガス、灯油代などの熱源代7.5億円の計12・7億円。下川町の狙いはこの支出をバイオマスエネルギーで賄うことで、外部に流出する資金を町内で循環させ、町づくりに役立てることにある。

例えば、公民館や町営住宅など30施設に熱を供給することで、年間約1900万円もの暖房費などの燃料代が節約され、その浮いた分の半分が子育て支援に、残り半分が将来のボイラー更新費用として積み立てられているという。また、お年寄りをこのシステムと一体となった集合住宅に集めて、高齢化対策にも役立てている。

町おこしといえば、国頼み、補助金頼みという自治体が多いなか、下川町の取り組みは貴重だ。小さな町が国に頼らず、自立・持続するため、自らの森林資源を生かし、産業と雇用、そしてエネルギーを自作する。地方創生の模範となるケースだ。

安易に大手商社参入を受け入れるべきではない

ただし、下川町の前途が順調かというと、そうでもない。3年前の町長交代を機に、大手商社が下川町でのバイオマス熱電併給ビジネスに名乗りを上げた。大手商社に任せてしまえば、町の当初の投資額は少なくて済む。その分、リスクが減るから安心だ。

だがその一方で、本来町に入るはずの熱電併給の利益が大手商社へと流れる。必要資金は大企業任せという「目先の安楽さ」を選べば、大企業依存となり、将来の自立は達成できないのだ。下川町は、賢明にもこの安易な選択肢を退けようとしている。

ここで重要なのが国の政策だ。国の地方創生関連予算には、地方の中央依存を高めるバラマキが目立つ。下川町のように自立・持続的なプロジェクトを目指す自治体に限定して、手厚く支援するという発想がない。

全国で再生可能エネルギーのビッグプロジェクトが進むが、結局は都会の大企業の儲けにしかならないものが多い。地域内にお金が落ちて循環するよう、地域の関係者が出資額の過半を占めるプロジェクトに限って国が支援するという原則が必要だ。

国は今こそ、真に地方の自立支援につながるプロジェクトへの重点支援に舵(かじ)を切るべきだ。

●古賀茂明(こが・しげあき) 1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。新著は『国家の共謀』(角川新書)。ウェブサイト『Synapse』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中