「新潟県知事選は今後の与野党対決や日本のエネルギー政策にとって極めて大きな意味を持つ選挙」と語る古賀茂明氏

新潟県の米山隆一前知事の辞職に伴う知事選が、6月10日に投開票となる。

『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、立候補のスカウトを受けたことを明かす。

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出会い系サイトで女性に金品を渡して交際したとして、米山隆一(りゅういち)新潟県知事が辞意を表明したのは4月中旬のこと。

その後釜を選ぶ新潟県知事選の野党統一候補が決まった。民進、社民両党系の会派「未来にいがた」所属の池田千賀子県議だ。池田県議は柏崎刈羽(かしわざきかりわ)原発がある柏崎市出身で、脱原発派。同原発再稼働に慎重だった米山前知事の後継者にはぴったりだ。

ただ、候補選びは難航したようだ。新潟には森ゆうこ参院議員、菊田真紀子衆院議員といった野党系スターがいるが、森氏は米山知事を前回選挙で擁立した責任を取ると言って、今回の知事選では、表立った動きは控えていた。また、菊田氏擁立論もあったが、国政選挙で強力な自公候補にも勝てる貴重な戦力である菊田氏の後に、誰が議席を守れるのか考えると、野党側も二の足を踏んでしまう。

そのため、なかなか有力な候補が見つからなかったようで、私の元にも「ぜひ、新潟県知事選に出てほしい」と、立憲民主党の幹部から直々に出馬要請があった。断ったが。

小説『原発ホワイトアウト』(講談社)の著者として知られる現役官僚の若杉冽(れつ)氏(もちろんペンネーム)も出馬を打診されたそうだ。GW直前の電話で、若杉氏は新潟の有力野党国会議員から待ち合わせの店を指定され、「来るまでずっと待っている」と、猛アタックを受けて困惑していると話していた。

彼が迷ったのには訳がある、と私は思った。実は、彼はもともと、河野太郎外相のエネルギー政策を支持していて、これまでもいろいろな形で河野氏をサポートしてきた。脱原発派である河野外相を総理にして、日本全体の原発政策を転換させたい。そう考えているのだろうと想像した私は、「今秋の自民党総裁選で河野外相が当選するのに賭けるより、新潟県知事選にチャレンジするほうがずっと確率が高いよ」と助言したのだが、結局彼が立つことはなかった。

見ものとなるのが中央政界での野党各党の動き

自分が出馬を固持したのになんだと叱られそうだが、私はこの新潟県知事選は今後の与野党対決や日本のエネルギー政策にとって極めて大きな意味を持つ選挙だと考えている。

中央政界では野党は分裂含みで野党共闘の姿を描けずにいるが、新潟県政は旧民進系や社民系議員が中心となって野党間で一定の連携が維持されている。池田候補が野党統一候補として擁立できたのはそのためだ。

そこで見ものとなるのが中央政界での野党各党の動きである。立憲民主の枝野代表、国民民主の玉木、大塚両共同代表といった旧民進からの分裂組が公示直後から新潟入りし、他の野党と一丸となって池田候補を応援するのか? それとも戦況を様子見して、接戦になって初めて新潟入りするという姑息(こそく)な行動をとるのか?

公示直後から党首クラスが入って全国の関心を集めれば、市民団体の支援も全国に拡大し、勝利できるだろう。そうなれば、来夏の参院選でも安倍自民と互角に戦う展望が開ける。逆にアリバイ作りの関与だけなら、自民候補に敗北し、国政でも野党共闘は絵に描いたモチとなる。結果、安倍政権は安泰、原発政策も不変となりかねない。

新潟県知事選は単なる地方首長選ではない。野党共闘の成否も含めて、今後の国政の行方を占う選挙だ。その結末をしっかりと見届けたい。

●古賀茂明(こが・しげあき)1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。新著は『国家の共謀』(角川新書)。ウェブサイト『Synapse』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中