『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、中央省庁などの障害者雇用水増し問題について、解決のヒントを探る。

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障害者雇用促進法により、行政機関や企業には一定の障害者の雇用が義務づけられている。

ところが、国の33の行政機関のうち、27省庁で雇用数の不正な水増しが行なわれていたことが発覚した。厚労省が8月28日に発表したところによると、省庁全体では6800人余りの障害者が雇用されていたはずだが、実際に働いていたのはおよそ半数の3400人にすぎなかったのだ。

障害者の雇用機会を確保し、共生社会を実現する上で、この施策は極めて重要だ。しかし、手本となるべき国の機関が水増しをしていたとは、就業の機会を奪われた障害者、そしてまじめに障害者に働く場を提供してきた企業は浮かばれない。

なぜ、こんなことが起きたのか? 水増しの背景にあるのは、障害者雇用を担当するキャリア官僚の無関心だと私はみている。障害者雇用を増やしても出世につながらないと雑務扱いし、現場のノンキャリに採用を任せていたのではないか? 

私もかつて経産省で働いていたから想像がつく。おそらく担当のキャリア官僚は年に1、2回、現場のノンキャリから報告を受け、雇用目標の未達成がわかっても「来年までに達成せよ」と指示するだけだったはず。

しかも、キャリア官僚は1、2年で異動になる。そのたびに「未達成」の報告が新任のキャリア官僚に行なわれ、「来年は目標をクリアするように」との形だけの指示が繰り返される。そんなことが何度も続いて不正な水増しが常態化したのだろう。

私は2007年から独立行政法人の産業技術総合研究所に出向し、理事として障害者雇用を担当したことがある。部下から「目標未達」の報告が上がってきたので、すぐに達成に動いたのだが、採用業務は難しかった。

専門ではないので勝手がわからず、地域の障害者施設のアドバイスを仰ぎ、就業希望者がこなせる仕事を準備する。例えば、花の手入れが向いていると聞けば、植栽を花壇にして花作りをしてもらった。私が採用できた障害者は10人にも満たなかった。大きな成果を出す前に本省に異動してしまったのだ。もちろん、本省の幹部はなんの関心もない。

それでも、障害者の方に元気な声で「おはようございます」と挨拶され、ほかの職員にも職場が明るくなりましたねと言われたときは本当にうれしかったのを鮮明に覚えている。

そのときの経験で言えば、障害者の採用業務は片手間でできるような仕事ではない。それだけに官邸が指示しても、短時間で雇用目標が達成できると考えてはいけない。

それこそ、官邸が内閣人事局を通じて人事権を行使し、「障害者雇用を喜びと感じる官僚を担当にせよ」と各省庁の次官、官房長に指示し、「目標を達成できなければ採用担当者ではなく、次官、官房長に×をつける」というぐらいでなくては。

ただ、これこそ真の政治主導である。「内閣人事局があるから、モリカケスキャンダルで首相を忖度(そんたく)するような官僚ばかりになった」との批判は根強い。しかし、こんな人事権の使い方なら世間から文句は出ないだろう。

障害者の雇用水増しの責任は各省庁にある。しかし、官僚を動かすのは政治家の役目だ。官邸は今こそ、各省庁が真の障害者雇用促進に向けて動きだす「よき動機づけ」―内閣人事局を活用すべきではないか?

●古賀茂明(こが・しげあき)
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。近著は『国家の共謀』(角川新書)。ウェブサイト『Synapse』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中

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