『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、自民党総裁選での安倍晋三首相と佐喜眞淳(さきま・あつし)沖縄県知事選候補の選挙戦術について、類似性を指摘する。

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"親分と子分"だからなのか、このふたり、することがよく似ている。

親分は安倍晋三首相だ。自民党総裁選で、対立候補の石破茂元幹事長との論戦から逃げまくっている。石破氏は政策テーマごとに2、3時間の討論会の開催を要求していたが、政策論争でボロを出したくないと安倍首相が恐れたのか、討論会は3回のみとなった。

一方、子分は沖縄県知事選候補・佐喜眞淳前宜野湾(ぎのわん)市長だ。安倍官邸の強力なプッシュを受けて自民党候補として出馬するのだから、子分と呼んで差し支えないだろう。

こちらも県政記者クラブ主催の立候補予定者討論会には当初、そっぽを向いていた。その後、世論の批判が高まると一転、「不参加は事務方の不手際によるもの」と釈明し、参加することになったが、いかにも苦しい言い訳だ。

選挙戦術もよく似ている。両者とも本質的な議論を避け、イメージ戦略に徹している。

戦力不保持を規定した9条2項の削除を主張する石破氏に、首相は1項、2項を残したまま、自衛隊保持を明記する3項追加論を展開している。その狙いは「1項、2項は残るので、平和憲法の性格は変わらない」と広く国民にアピールすることで、ゴリゴリのタカ派改憲論者・石破vsソフトな改憲派・安倍の構図を打ち出すことにある。

だが、9条3項で自衛隊を明記すれば、1項、2項は死文化しかねない。自衛隊を活用し、装備を強化して国防することが憲法上の義務になるからだ。その行き着く先は果てのない軍拡競争、そして海外派兵だ。

一方の石破氏は「国民に理解してもらう努力が足りない」と、9条の早期改正に慎重な姿勢を崩さない。2020年までの性急な改正を目指す安倍首相に比べて、どちらが"ソフト"なのか、ハッキリしているだろう。

そして、佐喜眞候補も辺野古(へのこ)基地新設には触れず、普天間(ふてんま)飛行場移転だけを口にする。この論法なら、普天間飛行場を人口密集地から移転させるために尽力する候補と、こちらもまたソフトさを演出できるわけだ。

このような欺瞞(ぎまん)は討論会を重ねれば露(あらわ)になる。だから、安倍首相も佐喜眞候補も討論会をいやがっているのだ。

だが、それでも首相と石破氏には徹底した政策論争を望みたい。特に朝鮮半島有事への対応について論戦を交わしてほしい。

現在、米朝関係は危うい状況にある。非核化を要求するアメリカ、朝鮮戦争の終結を最重要視する北朝鮮との間で対立が深まり、今年6月の米朝合意が維持できるかどうか、微妙な状況だ。へたをすると、トランプ大統領が北朝鮮攻撃を検討していた昨年秋の剣呑(けんのん)な情勢に逆戻りしてもおかしくない。

石破氏は私との対談(『週刊プレイボーイ』8月27日発売号に掲載)で、米朝開戦の危機が高まれば「北朝鮮への攻撃は得るものはないとアメリカを強く説得する」と断言。一方、安倍首相は「最大限の圧力」を主張し、「対北戦争もありうる」というトランプ大統領の姿勢を手放しで評価している。

この差は大きい。討論会でそれが明らかになれば、どちらが首相にふさわしい政策と資質の持ち主か、有権者には見えてくるはずだ。もとより、公開討論会は国民がよりよいリーダーを選ぶために欠かせない。自民総裁選、沖縄県知事選での候補間による活発な論戦を期待したい。

●古賀茂明(こが・しげあき)
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。近著は『国家の共謀』(角川新書)。ウェブサイト『Synapse』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中

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