NPOなどで地道に人助けをしている人こそが議席に座るべきです

元貴乃花親方の花田光司氏が日本相撲協会を退職。元文科大臣・馳浩(はせ・ひろし)衆議院議員と面会していたことなどから各誌はこぞって氏の「政界進出の可能性」を報じているもののの、本人は否定している。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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日本相撲協会を退職した元横綱貴乃花こと花田光司さん。元文部科学大臣の馳浩衆議院議員と会ったことから「政界進出か?」と話題になっていますね。来年の参院選に出馬して国会に身を移し、角界を変えるつもりなのではないかといわれていますが、本人は否定。ワイドショーでも賛否が分かれたり、にぎやかです。

雑誌は議席予想で売り上げを伸ばしたいのか、早くからいろんな噂を書き立てます。たいていは名前の知られた、いわゆるタレント候補なんかが話題になるのですが、定番としては今回の花田さんのようなスポーツ界の超有名人や、ニュースキャスターなど。あとは元アナウンサーも名前が挙がりがちです。

で、先日ある知り合いの新聞記者から「『サンデー毎日』の件は本当なの?」と言われたのでなんのことかと思ったら、来年の参院選について「立憲民主は小島慶子などの擁立に動く」と載っているじゃないですか。

ちょっと! やめてやめて! 私、今一家を養う大黒柱で、日本とオーストラリアを渡り鳥みたいに往復して必死で働いてるんです。選挙に出るなんて噂が立ったら、収録番組がお蔵入りになることを恐れてテレビ局が番組に呼んでくれなくなっちゃうから、本当にお願い、勘弁してください。マジでわが家の生活がかかっているんです!

国会議員は立派な仕事だけど、私はやりたいとは思わない。こうして街場で勝手なことを書き散らすほうがよほど自由だもの。

そりゃ胸にバッジをつけて議事堂に座れば、権威ある仕事をしているように見えるかもしれないけど、ただの集票マシンとして椅子を温めている限りは、党の言うことを聞く組織の発表係のようなもの。それじゃあ、性に合わなくて辞めたアナウンサーの仕事と同じこと(まあ、だから元アナって名前が挙がりがちなんだろうけど)。

タレント候補が当選してから「これから勉強します!」なんてぬけぬけと言って、まあ実際それで議員になってから一生懸命勉強している人もいるけれど、でも私は有権者として、議員になる人にはあらかじめ立法府の一員にふさわしい知識と見識を持っていてほしいです。

私の知人友人には、NPOなどで地道に人助けをしたり、行政と一緒になって制度作りを続けたりしている人たちがいます。世間的には華やかな有名人ではないけれど、彼らのような人こそが議席に座るべきです。

5月に施行された政治分野における男女共同参画推進法では男女の候補者を同数にすることがうたわれているけど、来年の参院選が女性タレント候補だらけにならないことを願います。派手でなくても、いろんな経験を積んだ多彩な人物を国会に。バッジをつけた素人に税金を使って社会見学させるのは、いいかげんもったいないですから。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。近著に『幸せな結婚』(新潮社)、『絶対☆女子』(講談社)など

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