所属議員61人の野党第2党でありながら、支持率は0%から1%をさまよっている国民民主党。玉木新代表のかじ取りによって国会で存在感を示すことができるのか

国民がいまだ野党に不信感を抱いていたり無関心なのは、民主党政権時代の失敗が尾を引いているからだ。そしてそれが"安倍一強"をつくった一因でもある。

かつて民主党に所属し、今は新しい野党の代表を務める国民民主党代表・玉木雄一郎氏は、この問題にどう向き合うのか?

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9月4日、玉木雄一郎議員が新代表に選ばれ、再出発を果たした国民民主党。ただ、無風といってもいいぐらい世論の関心は低いままだ。

離合集散を繰り返した末に生まれた政党として、"まとまらない民主党"のイメージをいまだ引きずっている感のある国民民主党は、現状をどう打開するつもりなのか?

■「国民民主党はスジを通した集団だ」

──国民民主党の政党支持率が1%前後のまま、さっぱり上向きませんね。

玉木 そうは言っても今年5月8日に生まれたばかりの政党ですから。政党名や候補者名は、衆院選のような大きな選挙を何度かやらないとなかなか有権者には浸透しない現実がありますよ。

──ただ、国民民主党に限らず野党への不支持は深刻な状況です。その原因はやはり、有権者が旧民主党へのトラウマを今も強く抱いていることではないかと感じます。

玉木 それは否定しません。民主党の最大の失敗は政策の小さな違いで割れてしまったこと。自民党は"権力のうまさ"を知り尽くし、議員それぞれに政策の違いがあっても最後にはみんなで結束します。

しかし、民主党は個々の政策を実現することに重きを置く議員が多かった。だから、いがみ合って権力争いや分裂騒動に汲々(きゅうきゅう)となってしまった。

そして、今も野党陣営は大きな観点からひとつにまとまらない弱さを克服できていません。そんな姿を見て、有権者は野党には政権を任せられないと考えているのでしょう。

──とはいっても、国民民主党は民進党から割れた希望の党が、さらに分裂し、民進党と再結集したことで生まれた、という経緯があります。この"まとまらなさ"は、まさに民主党のトラウマを体現しているかのように思えるのですが。

玉木 いいえ。実態はむしろ逆です。われわれは数合わせの行動に走った集団と見なされがちですが、希望の党への移行は当時、民進党代表だった前原誠司議員の提案を受け、昨年9月の党の両院議員総会で機関決定したこと。われわれはその組織決定に従って行動したんです。だから、むしろ「一番スジを通した集団」だと自負しています。

──数合わせで動いたわけではない?

玉木 もちろん。私たちは批判や支持率の低下を受けても、定位置で自らの政策を訴えてきました。その姿勢は一貫しています。

──定位置とは?

玉木 右にも左にも寄らない、現実的な改革中道政党のポジションです。奇をてらう発言や政策をぶち上げれば、有権者の注目も集まり、それなりの人気取りはできるでしょう。でもそれはしない。今の定位置で愚直に私たちの政策を掲げていく。このポジションがなくなると、自公政権に代わって現実的な政策を掲げて政権を担う政治的主体が政界から消えてしまいます。

──ただ、国民民主党は方針が二転三転していますよね? 例えば、モリカケ疑惑ばかり追及するほかの野党と一線を画すため、玉木議員は国会の論戦では「対決よりも解決」を重視すると発言した。ところが、党代表選後の記者会見で再び「対決」を強調するかのような発言をしています。

玉木 二転三転なんかしていませんよ。どんな政策でも解決案を持たないと、与党と厳しく対決もできないでしょう? "解決"を捨てたというわけではありません。

■民主党のトラウマを引き受ける覚悟

──玉木議員は、野党共闘についてどうお考えですか?

玉木 自公政権に代わる野党政権は連立政権しかありえません。小選挙区制度の下で自公政権を倒すには、野党側もいくつかの政党がまとまるしかない。だから、先の代表選でも私は統一会派、共同選対をつくろうと、立憲民主党に提案した。

──でも、立憲民主党は共闘には消極的ですよね。

玉木 はい。残念ながら枝野幸男代表からは、なかなか色よい返事がありません。

でも、ふたつの党を足したら、十分に自公を凌駕(りょうが)する議席数を取れる。事実、昨年秋の衆院選の比例得票は立憲民主党が1100万票、当時は希望の党でしたが、われわれにいただいた票が960万票。対する自民は1850万票で、野党票のほうが多かった。

この数字は政権交代を望む国民が多いことを示しています。立憲民主党と国民民主党がまとまれば、いつでも政権交代は可能な状況にあるんです。

立憲民主党は野党第1党です。安倍政権打倒という共通の目標に向かって、枝野さんにはリーダーシップを発揮してほしい。

──ただ、野党が政策や立場の違いを超えて集まることに懐疑的な有権者は多いですよ。民主党と同じ轍(てつ)を踏むだけじゃないかって。

玉木 そうですね。民主党の失敗の記憶は今や、政界の「ババ」と化しているという論があります。現在、野党の多くの政治家がそのババを押しつけ合って、「自分は民主党の失敗とは無関係だった」と主張しているように見える。

正直に言うと、われわれもこのババを負う責任はないはずです。私は民主党政権の時代は1年生で政務官ですらなかった。国民民主党には民主党時代に政府入りした経験がある議員も少ない。

でも、私はあえてババを喜んで引き受けますよ。そして、失敗したことへの反省、検証をやり遂げる。それこそが、有権者が抱える野党へのトラウマを払拭(ふっしょく)する方法なんだと思います。

──ババを引き受けながら、野党をまとめることができますか?

玉木 人の数だけ政策があります。その違いを問題にしていたら、絶対にまとまれません。そうではなくて、各政党が独自のカラーを出しながらも、大きな部分だけを一致させ、あとの細かな政策の違いはお互いが譲り合う。そこをしっかり調整していけば、野党は必ずひとつにまとまる。

──大きな部分とは?

玉木 内政でひとつ、外政でひとつ。そのくらいの大きな共通政策で一致すれば十分。例えば内政では「国民の暮らしが一番」でまとまればいい。アベノミクスで株価が上昇し、企業収益も好調ですが、その一方で、例えば生活保護の受給世帯は過去最多になってしまった。受給世帯の半数以上は65歳以上の人たちです。

このように多くの方々が日々の生活に不安を感じている。なのに、安倍首相はトランプ大統領の言いなりに高額の武器を買ったり、外遊に出かけては巨額の援助資金をバラまいています。そんなお金があれば、まずは国民の暮らしに振り向けるべきでしょう。

──国民民主党はこの7月、「未来先取り調査会」を立ち上げ、AI(人工知能)社会や少子高齢化社会を見据えた新政策を打ち出そうとしています。

玉木 世界は激変しています。28年にはインドがGDP3位になり、日本は4位に転落すると予測されています。ほぼ同じ頃、アメリカも中国にGDP世界1位の座を奪われます。国内では20年には女性の半数が50歳を超え、30年には家屋の3軒に1軒が空き家になる。

なのに、こうした変化にどう対応するのか、今の政治はまったく議論できていない。だから、未来にどんな政策を打つべきなのか、「未来先取り調査会」を立ち上げて、必死に政策づくりに取り組んでいるところです。

いずれにしても今の安倍政権ではできない大きな共通政策を掲げ、その上で野党がどこまで一致できて、どこは一致できないのか、そこをきちんとすり合わせて国民に語りかけることが大切です。

■次の衆院選で政権交代を狙う!

──玉木さんの中で、政権交代に向けた具体的なスケジュールはあるんですか?

玉木 4年以内には政権交代を実現させたい。次の衆院選で政権交代を狙いますよ。そのためには国民民主党と立憲民主党を軸として野党がまとまった上で、有権者に具体的な連立政権構想を示す必要があります。

──首班指名は?

玉木 野党第1党の党首が自然です。その野党連立政権で、日本が直面する問題の解決策をしっかり提示する。それこそがわれわれの役目だと考えています。

──最後にひと言。

玉木 先の通常国会では予算委員会などでの論戦を手控えてしまったんですが、少し反省しています。もう一度刀を抜いて質問席に立ち、安倍政権に白兵戦を挑むつもりです。ぜひ、国民民主党の今後に期待してください。

「民主党のトラウマ」をどうする? 立憲民主党代表・枝野幸男「私たちは"非自民で集まる"という過ちを二度と犯さない」

●玉木雄一郎(たまき・ゆういちろう)
1969年生まれ、香川県出身。元大蔵・財務官僚。2009年の衆議院選挙にて民主党公認で出馬し、初当選。15年、民進党代表選に出馬。その後、民進党幹事長代理に就任。17年には希望の党の公認を受け出馬し4選。18年、民進党と希望の党の議員が合流して国民民主党を結党し、同年9月、代表選挙に勝利して初代表になる