30過ぎた大人がわざわざ宣言しなくちゃいけないのも、なんだかなぁ 30過ぎた大人がわざわざ宣言しなくちゃいけないのも、なんだかなぁ

昨年、橋本健元神戸市議との不倫を報じられ、「一線は越えていない」というフレーズで話題を集めた今井絵理子参院議員。先日自身のブログで橋本氏との交際を公にし、党内外から批判の声が。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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たいていの恋愛は、他人から見れば身勝手でみっともないものなんじゃないかと思います。純粋な愛情や崇高な理念だけでつながっているわけではないでしょう。夫婦だってある程度の損得勘定とか、性的な執着とか、いろんな要素があって、たまたま両者にとって結婚という選択が最適であると判断したまでのこと。

どの道キラキラした真情と、妙に冷静な計算と、制御不能な欲望とがない交ぜになった深みに浮かぶ愛の小舟に危なっかしく揺られていくしかないわけですね。

で、今井さんは妻帯者に恋をしたわけです。夫婦関係は事実上破綻してはいるけれど、法的にはまだ婚姻関係が持続している状態の男性を好きになったのですね。まあ、そんな話はそこらじゅうで聞きますから、今井さんが特別不埒(ふらち)な人間ということでもないでしょう。

手つなぎ写真で有名になった橋本健元神戸市議はその後離婚し、このほど今井議員は橋本氏との交際宣言をしました。30過ぎた大人がわざわざ宣言しなくちゃいけないのもなんだかなあですね。

議員として障害を持つ子供のために一生懸命活動しているなら、それ以外の彼女の私生活なんて別にどうでもいいですよ、私は。誰と付き合おうが別れようが、そんなこと他人に説明する必要もないし、いくら説明したところで本当のことなんて伝わりっこない。知りたいとも思わないです。

男女って不思議なものですよね。どうしてあんな人がいいの?というような相手に執着したりして。最近テレビで活躍中の金子恵美前衆院議員と宮崎謙介元衆院議員夫妻も、そんな男のどこがいいんだとかいろいろ言われているけど、まあ、金子さんが言うように、夫婦のことは夫婦にしかわからないもの。今井さんも橋本さんに対して理屈じゃない感情があるんでしょう。

まあでも、議員をやっている人なら、好きになった相手が市議として政務活動費を不正に使用していた疑いが生じたら「おまえ何やってんだ」と色恋も吹っ飛びそうな気はします。今井議員はそうはならなかったのだから、裁判で争うべき相当な理由があると判断したのか、最後まで彼を支えると決めたのか。そこは他人にはうかがい知れないですね。

ワイドショーの司会者やコメンテーターは、ありえないとか非常識とかバッサバッサ切り捨てているようだけど、有名司会者でも既婚者との長い恋愛関係が半ば公になっていた人もひとりならずいるし、誰だって過去にはいろんな割り切れない恋をしているはず。「ここでバッサリやることを望んでいる観客たち」って、果たしてどれぐらいいるんだろ。

むしろ出演者全員が歯切れの悪いことしか言わない正直すぎるワイドショーのほうが面白いと思うんだけどなあ。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。近著に『幸せな結婚』(新潮社)、『絶対☆女子』(講談社)など

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