アベンジャーは、偵察用のレーダーやセンサーに加え、対地・対艦ミサイル「ヘルファイア」や誘導爆弾「ペイブウェイⅢ」を搭載可能。さらに、無人機への空対空ミサイル搭載実験も進んでいる アベンジャーは、偵察用のレーダーやセンサーに加え、対地・対艦ミサイル「ヘルファイア」や誘導爆弾「ペイブウェイⅢ」を搭載可能。さらに、無人機への空対空ミサイル搭載実験も進んでいる

日本がついに無人攻撃機を導入か――?

読売新聞は11月9日付夕刊1面で、日本政府が米国製の無人攻撃機「アベンジャー」を海上自衛隊に導入する方向で検討に入ったと報じた。今年の年末にまとめられる「防衛計画の大綱」に無人機の活用を盛り込み、2020年代の運用開始を目指すという。

アベンジャーは、プレデターやグレイ・イーグルなどの無人攻撃機開発で実績がある米GA-ASI社の最新鋭機。ターボファンエンジンを持ち、全長12.5m、翼幅20.12m、最高時速740キロ、最高高度は1万8288m。18時間以上連続で滞空でき、ある程度のステルス性も備える。

航空評論家の嶋田久典氏が、導入の狙いを解説する。

「従来、米軍の無人攻撃機は戦地イラクやアフガニスタンの基地から展開していました。しかし、米軍がアフガンから一部撤退した後は、カザフスタンやタジキスタンなど域外からの展開に対応するため、さらに高い高度と速度が要求され、それに応えるべくアベンジャーが開発されたのです。

実は、長大な航続距離を持つ同機は、日本周辺で中国や北朝鮮が行なう"瀬取り"(海上での密輸取引)を広大な海域で監視する任務に適しています。現在、海自の有人哨戒(しょうかい)機P-1やP-3Cが対潜水艦任務で手いっぱいという事情もあり、同機に白羽の矢が立ったのです」

アベンジャーは広範囲にわたり距離・方位・高度を把握できるアクティブ・フェイズド・アレイ・レーダーを備え、地上・洋上の地形を鮮明に映し出す合成開口モード、動く目標だけをピックアップする動目標監視モードも搭載。さらに、最新のF-35戦闘機と同じ高解像度の赤外線センサーを使い、夜間や曇天時でも高度6000~7000mあたりから捜索する能力もある。

「来年度には、高度2万5000mからより広範囲を監視できる無人偵察機RQ-4グローバルホーク3機が日本に導入されます。まずはグローバルホークが怪しい動きを探知し、それからアベンジャーを急行させるという運用になるのではないでしょうか。

アベンジャーの価格は1機当たり1500万ドル(約17億円)で、導入数は、おそらく4機の小隊を4個、そして予備機を含め20機。海自艦艇からの発進は考えていないでしょうが、尖閣(せんかく)諸島対策などには沖縄の那覇(なは)や石垣(いしがき)島に配備されると思われます。無人機なので、衛星回線を使えば東京・市ヶ谷の防衛省からでも操縦可能です」(嶋田氏)

また、アベンジャーは攻撃機であり、ミサイルも搭載できる。中国が開発中の「彩虹7(CH-7)」をはじめとする軍用無人機が大挙、尖閣諸島に押し寄せてきた場合、迎撃も可能なのか?

「米軍が現在、無人機への搭載実験を行なっている空対空ミサイルAIM-9Xなら、条件が良ければ最大27kmの実射程がある。動作が緩慢な無人機相手なら迎撃も可能でしょう。さらに、無人機に搭載できる最新鋭のレーザー砲の研究も進んでいます。

ただし、仮に出力30kWのものを搭載できたとしても、現状では射程はせいぜい5km弱。しかも標的を破壊するためには3、4秒の連続照射が必要です。この点を改善すべく開発が続けられています」(嶋田氏)

近い将来、尖閣上空で無人機同士のミサイル空戦、あるいはレーザー空戦が勃発するかもしれない。