どうして志のかけらもない人を大臣にしたんでしょう

桜田義孝前五輪担当大臣が「東日本大震災の復興より自民党議員のほうが大事」と取れる趣旨の発言をし、事実上更迭に。桜田氏は以前から問題発言が取り沙汰されており「遅きに失した」の声もある。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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桜田義孝五輪担当大臣が辞任しました。ようやく、という感もありますね。五輪憲章を読んでいなかったり、パソコンも使っていないという驚きの仕事ぶりで、どうやらオリンピックに関してはほとんど関心がないらしいというのは明らかでしたが、ここへきて「復興よりも議員が大事」という発言で更迭です。

ちょっと考えれば適切ではない表現だとわかるのになぜそんなことを言うのか、理解に苦しみます。その手の発言がとがめられることもなくスルーされるような環境で仕事をしてきたということなんでしょうか。

1月に宮城県南三陸町の成人式に出席してきました。震災から8年たっても、震災前の日常は戻っていません。海岸地帯では盛り土をして地面を高くする工事が進んでいました。その風景を見ながら、どこが復興五輪だよと思わずにはいられませんでした。

国を挙げてのイベントであるオリンピック・パラリンピックは、ダイバーシティに寛容な社会の象徴であり、震災からの復興の途上にある被災地を励ますためのもののはず。なのにどうしてこんな基本的な資質に欠ける、志のかけらもない人を大臣にしたんでしょう。派閥に配慮して大臣ポストをあげたのかもしれないけれど、それにしてもひどい。そもそもあんな人が長く国会議員をやっていたことが驚きです。

器を整えて、かけ声をかけても、気持ちがこもらなければオリンピックはただの国ぐるみの人寄せイベント。まあ、もともとそういうものだという冷めた見方もできるけど、せめて担当大臣にはきちんとメッセージを発してほしいものです。被災地に励ましを送り、世界に対しても五輪の開催国としての意思を示す。次の鈴木俊一大臣がまともであることを祈ります。

改元が間近に迫っているせいか、来年のオリンピック開催はまだかなたにあるような気がします。箱を作って誰か適当に置いておけばいいという姿勢が今後変わることはなさそうだけど、内輪の理屈だけで人事をやれば、きっとまた同じようなことが起きるでしょう。

知人が若い政治家志望の人材を探しているのですが、まともな人ほど断るそうです。地道に頑張ってもメディアには報じられず、あきれた体たらくの大臣ばかりが注目を集めるのではそう思うのも当然ですよね。どんなに頑張っても世間からは尊敬されず、実際中身のない人がポストに就くのだからやっていられないでしょう。ちゃんと仕事をしている議員たちも気の毒です。

比べても仕方ないけど、銃乱射事件後のニュージーランドのアーダーン首相の素晴らしいリーダーシップや思いのこもった演説を見て、こんな真摯(しんし)なリーダーを持った国民は幸せだなと思ってしまったのでした。 

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が好評発売中

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