4月に行なわれた統一地方選で、予想外の初当選を果たした"キャラ立ち議員"を、開高健ノンフィクション賞作家・畠山理仁(はたけやま・みちよし)氏が直撃する連続インタビュー。
第1回目は「今回も落選か」と思われながら、東京・港区議にまさかの初当選を果たしたマック赤坂氏に聞く。
* * *
──2007年の港区議選から12年。国政選挙、知事選挙などを経て、14度目の挑戦での初当選。長かったですね。
マック 皆さんに当選のメッセージを送れて本当にうれしい。スマイル!(3秒静止)
──第一報を聞いたときは、どんな思いでしたか。
マック 「嘘だろう?」と思ったね。何しろ当選は初めてだし、あまりにも長く「落選が当たり前」の世界にいたからね。当選証書を受け取っても「本物か?」と疑ったね。
──当選の理由は?
マック やっぱりスマイル党員の動きが良かった。党員の頑張りがなければ勝てなかったね。
──応援演説には元川崎市議の山内和彦氏、長男の健太郎氏、秘書の込山(こみやま)洋氏らが立って支持を訴えていました。
マック 今回は本当に彼らの力が大きい。今回はアタシの動きが一番悪かった。
──いつもは連日、踊ったり演説したりする選挙運動でしたが、今回は街頭に立てない日もありました。
マック 病気になって、体調が良くなかったからね。
──告示日に候補者が街頭演説をしなかったのは衝撃でした。別の日に赤坂で見たときも元気がなかった。応援弁士が「人生最後の選挙」と叫んでいましたが、「選挙中に死ぬのでは」と思うほどでした。
マック はっはっは(笑)。でも、当選して元気がぐっと出たよ。やっぱりメンタルがデカいよね。議員バッジをつけたら、もっとシャキッとするんじゃないのかな(笑)。
──今回、港区議選に帰ってきたのはなぜですか?
マック 地元だし、東京23区の中でも最も進んだ中心の区だからね。オレを当選させたのはすごいよ。一時期、村会議員選挙に出ようかなと思ったこともあったんだけどね。
──やっぱり、ありますか?
マック ある、ある、ある。無投票当選もあるわけだから。選挙で勝って港区議になったことは自慢できることだよ。
──港区議として最初に何に手をつけますか。
マック まずは議会に注目を集めたい。多少、知名度のあるアタシが一翼を担ったことで、メディアの人にも傍聴に来てもらいたい。今までは傍聴席から叫んでつまみ出されていたけど、これからは自分の議員の席から叫べる。退場にはならないと思うんだよ。
(♪リリリリリン♪と電話着信。取材中断。通話後再開)
おめでとうの電話だったよ。世界中のマックファンからメールや電話が来る。8割が女性だね。でも、せっかく当選したんだから、スキャンダルには気をつけないとね。
──2018年には女性スキャンダルがありました(準強姦[ごうかん]と脅迫の疑いで書類送検)。冤罪(えんざい)を主張して、結果的に東京地検は不起訴処分としましたが、今回の当選で名誉回復がなされたのでしょうか。
マック これからだろうね。港区議としての働きを見てもらうしかないと思うよ。
──ほかに考えていることは?
マック 来年は東京オリンピック・パラリンピックの年。アタシはタレント議員のようなものだから、港区を世界的に有名にしたい。例えば聖火リレーで議場の周りを3周するとかね。まあ、これからいろいろ考えますよ。
──議場ではおとなしくしていられるんでしょうか?
マック おとなしくはせんだろうね。ただ、正規の手続きを踏む。やっと実力を発揮できる資格を与えてもらった。
──最初の港区議選では普通のスーツで活動して179票。それ以降のコスプレは、「ここまでしなければ注目しない社会」に対するマックさんなりの戦い方だったのでは?
マック もうコスプレをせずに、背広ネクタイ姿でも、発言内容で注目されるときが来たと思う。
──これから選挙に出る人たちには何を伝えたいですか?
マック アタシは東京都知事選(4回)、参議院選(3回)、衆議院選、大阪府知事選、新潟県知事選など、供託金300万円クラスの大きな選挙から挑戦してきた。
テレビの政見放送で知名度を上げて、最後は基礎自治体である港区の議員になった。これからやる人で本当に当選を目指すなら、小さいところから攻めろ。謙虚になってほしいね(笑)。
──「もうダメだ」と思ったことはないんですか。
マック 常にそうだよ。今回も手応えなんてなかったし、常に危機感を持ってやってきた。それでも諦めずに挑戦を続ければ、最後に笑える。それを実際に見せられたんじゃないかな。
──12年の助走を経て、いよいよ大爆発でしょうか。
マック あんまり大爆発はしない。せっかく議員になったのに、初日から議員辞職勧告を出されたら困る。ルールを守って議会を活性化するよ。
──パイオニアの責任?
マック うん。最初の3ヵ月は特にまじめにやるよ。