気候危機に対して日本はまるで当事者意識がないと思われて当然です

国連総会に合わせてニューヨークを訪れている小泉進次郎環境大臣が、環境関連のイベントの会見で「気候変動のような大きな問題は楽しく、カッコよく、セクシーであるべき」と海外記者団の前で持論を展開。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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あと1年とは驚きです。いやオリンピックじゃないですよ。今年7月のBBCの報道によれば2020年の終わりまでに温室効果ガス排出削減対策を打たなければ、地球環境の壊滅的な変化を避けることはできないんだそうです。10年後じゃなくて、来年です。

最近は気候変動という言葉も、気候危機と言うようになりました。地球に優しくなんてレベルではなく、人類の生き残りをかけた非常事態です。地球にしてみれば今いる生き物が絶滅しようが知らんでしょう。

各地で台風やハリケーンが猛威を振るい、洪水や旱魃(かんばつ)が起き、森林火災が広がり、永久凍土や氷河氷床の融解が進んでいるなか、警鐘を鳴らしているのがアントニオ・グテーレス国連事務総長。

先日の国連気候行動サミットでも「参加国は気候危機のための具体的対策なしには来るなよ」というメッセージを発していたのですが、そこに出かけていったのが今やポエム発言で話題の小泉進次郎環境大臣です。ニューヨークでステーキを食べに行くさまが報道されましたが、環境大臣としては無知を晒(さら)す行動でした。

そもそも先進国で唯一、石炭火力発電を増やして批判されている日本。その環境大臣が、まさに気候危機について話し合うサミットの最中に、ウシが出す温室効果ガスが問題になっている牛肉を食べたいと、ステーキレストランに行ったわけですから。

大臣の言動というのは、その国がある問題に対してどのような態度であるかを示すものと見なされますから、気候危機に対して日本はまるで当事者意識がないと思われて当然です。

さらに英メディアの『インディペンデント』などが、小泉大臣が「政治などの問題は時に退屈だが、若者を巻き込むには気候変動対策はクールで楽しくてセクシーじゃなきゃね」といった趣旨の発言をしたと報道。

スウェーデンの16歳の環境活動家グレタ・トゥンベリさんをはじめ、世界中で若者や子供たちを中心に400万を超える人々がデモを行ない、政治家は気候危機対策のためにすぐに行動せよと真剣な怒りを訴えている最中にこの発言は的外れで、危機感ゼロです。

また、記者から「半年から1年以内に石炭火力発電をどう減らすのか」と尋ねられると絶句。「先週就任したばかりだから......」と言い逃れる始末です。小泉大臣には、脱原発と温室効果ガス削減の両立のために再生可能エネルギー利用などの具体策を国内外に示す責任があります。日本の報道機関も単なる進次郎叩きにせず、そこをちゃんとニュースにしてください。

その頃、国内に目を転じれば日本には台風17号が接近。50年に一度の豪雨が心配されるなか、こちらも新任で防災などの17部門を担当することになった今井絵理子内閣府大臣政務官が、佐賀と千葉の人々に向けて「気を強く持って」とツイートしているのを見て、本当に気が遠くなったのでした。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が好評発売中

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